ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

『ちょっと差がつく百人一首講座』バックナンバー一覧へ

【2001年6月30日配信】[No.029]
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 【今回の歌】

   わたの原 漕ぎ出でて見れば 久かたの
    雲ゐにまがふ 沖つ白波

  法性寺入道前関白太政大臣(76番) 『詞花集』雑下・382

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

  さて、うっとおしい梅雨ももうすぐ終わり。当メルマガでは、
 ここのところ暗めの恋の歌ばかり紹介してきましたので、ここら
 で梅雨を吹き飛ばすべく、夏を先取りした歌をご紹介しましょう。
  真っ青な海と空、白い雲と波のコントラストが鮮やかな一首です。

■□■ 現代語訳 ■□■
  
  大海原に船で漕ぎ出し、ずっと遠くを眺めてみれば、かなたに
 雲と見間違うばかりに、沖の白波が立っていたよ。
 
■□■ ことば ■□■
 【わたの原】
 広々とした大海原のこと。「わた」は海を意味します。
 【漕ぎ出でて見れば】
 「船で漕ぎ出して、見渡してみれば」という意味です。上一段動
 詞「見る」の已然形に、接続助詞「ば」がつき、「すでに行って
 いる」という確定条件を示しています。
 【久かたの】
 「雲居」にかかる枕詞で、「天・空・日・月・光」などにもかか
 ります。
 【雲居】
 ここでは雲そのものを意味しています。本来は「雲のいるところ」
 つまり空を意味します。
 【まがふ】
 「混じり合って見分けがつかなくなる」という意味です。ここで
 は白い波と白い雲の見分けがつかない、という意味です。
 【沖つ白波】
 「沖の白波」という意味ですが、「つ」は上代に使われた古い格
 助詞で、「の」に当たります。またこの歌は体言止めです。
 
■□■ 作者 ■□■

  法性寺入道前関白太政大臣(ほっしょうじにゅうどうさきのか
 んぱくだいじょうだいじん。=藤原忠通、ふじわらのただみち。
 1097〜1164年)
  摂政関白藤原忠実(ふじわらのただざね)の息子。若いうちか
 ら関白・氏の長者(一族の長のこと。藤原氏の総帥)となり、太
 政大臣従一位に至りました。詩歌や書にも才能を示し、晩年には
 出家して、「法性寺殿」と呼ばれました。保元の乱の時には後白
 河天皇側につき、崇徳上皇・藤原頼長と対立。平清盛らの軍勢が
 崇徳上皇側を破り、勝利を収めます。
 
■□■ 鑑賞 ■□■

  詞書きには「海上の遠望」という題で、崇徳天皇の前で詠んだ
 題詠であることが示されています。
  大海原に船で漕ぎ出してみた。見るとはるかな水平線のかなた
 の青い空に白い雲が浮かんでいる。さらに真っ青な海原に、白波
 が立っている。雲と見間違うような白さだ? なんと爽快な歌で
 しょうか。
             ◆◇◆
  空の青さと海の青、雲の白さと波の白。コバルトブルーと白の
 コントラストがあまりに鮮やかで、まるで日本とは思えないよう
 な風景です。化粧品や旅行会社の夏のTVコマーシャルのような、
 突き抜けた色彩感と雄大さがあります。
  この歌は、百人一首にもある小野篁(おののたかむら)の
 わたの原 八十島かけて漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人の釣船
 をイメージして詠まれたものとされていますが、小野篁のような
 孤独感は、この歌にはありません。
  権力の絶頂にあった藤原氏の長らしい、雄大かつ豪壮な歌と言え
 るでしょう。
             ◆◇◆
  なお、保元の乱の時には題詠を命じた崇徳天皇と作者・藤原忠通
 は敵同士として戦うことになります。崇徳上皇とその弟の後白河天
 皇の権力闘争、また忠通と頼長兄弟の藤原家の家督の争いに、当時
 勢いを持ちはじめた源氏と平家の武士勢力が2手に分かれてつき、
 戦さになったものでした。
  結局、先手を打った後白河天皇と忠通側が勝利し、負けた崇徳上
 皇は讃岐に流され、頼長は戦死します。しかし、この乱によって貴
 族の勢力は弱まり、武士が力を持ち始めることになります。
  崇徳上皇が流された讃岐の地は、現在の香川県坂出市。瀬戸内海
 を望む海辺の街で、本州と四国を結ぶ、瀬戸大橋の基点です。
  ここからは、電車に乗って高松市まで1時間。金比羅神宮までも
 1時間ほどで到達することができます。
  坂出市の崇徳上皇ゆかりの史跡には、流された上皇が暮らした
 「雲井御所」(林田町)や、遺体が葬られた白峯山などがあります。
  史跡で石碑が立つのみですので、観光には郷土資料館など他のス
 ポットと組み合わされるのが良いでしょう。四国巡りに行かれた折
 には、少し立ち寄って見られるのも良いかと思います。

 

『ちょっと差がつく百人一首講座』バックナンバー一覧へ


せんべい,煎餅,おかき,あられ,おせんべい【長岡京小倉山荘】
京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】TOPへ