気候のおだやかな温帯に位置し、春夏秋冬の四季がはっきりとした国、日本。あたかも龍が横たわるように南北に伸び、山、川、海に恵まれた地形から、この国ではまた、ひとつの国にありながらも多彩な風景が形づくられてきました。季節の微妙な変化がもたらす動植物の移り変わりや、ひとつとして同じものはない環境の多様性にふれることで、日本人は自然と心を通わせる繊細な感性と美意識をはぐくんできたのです。
その発露として生み出された芸術が和歌でした。日本最古の和歌集『万葉集』には、四季折々の自然の風物を詠んだ歌が数多くとられています。平安時代に入ると、自然は素朴なものから風雅を感じさせるものへと高められていきました。そして、人々は文字だけではなく、絵筆を使って自然の風趣を表わしはじめたのです。
それは四季絵とよばれる絵画。春夏秋冬の風物を、季節の順に表わす四季絵はおもに屏風や襖などに描かれ、宮中、貴族や武家の邸宅の調度品としてたいへん好まれました。それは住まいのなかにいても、いつ何時も自然の風趣を感じていたいという、日本人の願いの現われだったのかもしれません。
和歌や四季絵を通して表わされた風趣は、ある言葉に集約され、日本の芸術に共通したテーマへと昇華していきます。その言葉は「花鳥風月」。四季折々の花や木々を愛で、鳥の歌に耳を傾け、風と戯れ、月と語る心は俳句、浮世絵、漆芸や陶芸といった工芸、衣装、さらには料理にいたるあらゆる芸術創作の源となりました。
月明かりに照らされる紅葉の錦が、神秘的な美しさを漂わせる晩秋。しかし、季節はいつも色鮮やかな風景を見せるわけではなく、また、つねに心地よい音や風に恵まれているわけではありません。
やがて来る冬は、あらゆるものが色を失い、冷たい風が吹きすさぶ時節。先人はそんな荒涼とした世界にも風趣を感じ取り、それを文字や形で表わすことにより、永遠に色あせることのない芸術作品を生み出してきたのです。
目に見えないもの、侘びしいものにも心を通わせる、日本人ならではの繊細な感性。花鳥風月に遊ぶこころを、いつまでも忘れたくないものです。
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