ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2000年8月28日配信】[No.001] 
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 【今回の歌】

   来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
    焼くや 藻塩(もしほ)の 身もこがれつつ

 権中納言定家(97番) 『新勅撰集』巻13・恋3・849

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  今回は、第1回ということもあり、小倉百人一首の選者である
 権中納言定家(藤原定家)の歌をご紹介します。

■□■ 現代語訳 ■□■
松帆の浦の夕なぎの時に焼いている藻塩のように、私の身は
 来てはくれない人を想って、恋い焦がれているのです。

■□■ ことば ■□■
  【まつほの浦】
兵庫県淡路島北端にある海岸の地名です。松帆浦の「松」と、
 「待つ」が掛詞になっています。
【藻塩(もしお)】
海藻から採る塩のこと。古い製法で、海藻に海水をかけて干し
 乾いたところで焼いて水に溶かし、さらに煮詰めて塩を精製しま
 した。「焼く」や「藻塩」は「こがれ」と縁語で、和歌ではセット
 で使われます。「まつほ〜藻塩の」は、「こがれ」を導き出す序
 詞(じょことば)です。
  【夕なぎ】
夕凪と書き、夕方、風が止んで海が静かになった状態のことで
 す。山と海の温度が、朝と夕方にはほぼ同じになるので、こうい
 う状態になります。
【身もこがれつつ】
火の中で燃えて身を焦がす海藻(藻塩)の姿と、恋人を待ちこ
 がれる少女の姿を重ねた言葉。昔も今も、恋する女の子の気持ち
 は変わらないことがよく分かりますよね。

■□■ 作者 ■□■
  権中納言定家(ごんちゅうなごんさだいえ=藤原定家。1162〜
 1241年)。平安末期の大歌人藤原俊成の子として生まれ、正二位・
 権中納言まで出世しました。新古今集、新勅撰集の選者として有
 名ですが、何よりこの「小倉百人一首」を選んだ人として知られ
 ています。この歌のように叙情的な作品を得意とし、「有心体
 (うしんたい)」という表現スタイルを作りました。

■□■ 鑑賞 ■□■
  この歌の主人公は、海に入ってあわびなどの海産物を採る海乙
 女(あまおとめ)の少女です。
  いつまでたっても来てはくれない、つれない恋人を待って身を
 焦がす少女。やるせなく、いらだつ心を抱くその姿を、松帆の浦
 で夕なぎ時に焼く藻塩と重ねて表しています。
  煙がたなびく夕方の海辺の景色と、初々しい女の子の心の揺れ
 が読み手に伝わる、とても繊細でロマンチックな名歌といえるで
 しょう。
             ◆◇◆
  定家は、日本の代表的歌集「新古今和歌集」の選者の一人でも
 ありました。新古今集は、人の気持ちを風景などに託して描く
 「象徴的な心象表現」が特徴。素朴でストレートな万葉集や、テ
 クニックをこらして言葉の遊びを楽しむ古今集よりぐっと「大人
 っぽい」味わいを持ちます。この歌にも、新古今を編んだ定家ら
 しい心象表現が感じられます。
             ◆◇◆
  この歌は万葉集の「…淡路島 松帆の浦に 朝なぎに 玉藻刈
 りつつ 夕なぎに 藻塩焼きつつ 海人娘人(あまおとめ)…」
 を元の歌(本歌)として作られました。
  この歌にもあるように、「松帆浦」は兵庫県の淡路島の北の端
 にある、淡路町松帆崎の海岸を指しています。松帆崎は明石海峡
 に面した、本州にもっとも近い岬。磯に打ち寄せる波の向こうに
 明石市を望むことができます。これまでは、明石フェリーが就航
 し、淡路と本州を結んでいましたが、98年4月からは明石海峡大
 橋が開通したので、自動車でこの近辺を通ることができるように
 なりました。かねてより瀬戸内海国立公園に指定され、美しい風
 景を誇る土地ですが、大橋開通に合わせて「兵庫県立淡路島公園
 ハイウェイオアシス」などができ、観光を楽しめる設備が整備さ
 れつつあります。

 

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