ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年10月30日配信】[No.081]
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 【今回の歌】

  み吉野(よしの)の 山の秋風 小夜(さよ)ふけて
   ふるさと寒く 衣(ころも)打つなり

           参議雅経(94番) 『新古今集』秋・483

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  ずっと夏が続いていたような今年でしたが、やっと秋の涼しさ
 がやってきたようです。
  山のある田舎のほうでは、最近シカやタヌキなどの数がとても
 増えているそうです。人が減ってしかも保護が徹底したためで、
 作物を食べる害獣として疎まれているとか。
  
  晩秋になり、夜にシカが鳴き始めると冬が近い、などという話
 を聞いたことがあります。食べ物が少なくなって、里へ降りるこ
 とが増えるからでしょう。
  今回はそんな晩秋のわびしさを語る歌を紹介しましょう。
  
■□■ 現代語訳 ■□■
  
  奈良の吉野の山に、秋風が吹きわたる。夜がふけて(吉野とい
 う)かつての都は寒々とわびしく、衣を砧(きぬた)で叩く音が
 響いている。
 
■□■ ことば ■□■

 【み吉野の】
  吉野は、桜の名所として名高い今の奈良県吉野郡吉野町のこと
 です。「み」は言葉の頭につける美称。
 【さ夜ふけて】
 「夜がふけて」という意味です。「さ」は語感をととのえる接頭
 語です。
 【ふるさと寒く】
 「ふるさと」は「いにしえの都があり、忘れさびれた場所」=
 「古里(ふるさと)」のことです。吉野には古代に離宮がありま
 した。
 【衣打つなり】
 「衣を打つ音が聞こえてくる」という意味です。
 女性が夜にした仕事で、砧(きぬた)という柄のついた太い棒で
 衣を叩き、柔らかくして光沢を出しました。

■□■ 作者 ■□■

  参議雅経(さんぎまさつね。1170〜1221)
 本名、藤原雅経(ふじわらのまさつね)。藤原頼経(よりつね)
 の子供で、後鳥羽院に気に入られ、新古今集の撰者の一人となり
 ました。蹴鞠(けまり)の元祖である飛鳥井(あすかい)家の先
 祖です。

■□■ 鑑賞 ■□■

  中国・唐の大詩人、李白の詩に
 「長安一片月 万戸擣(打)衣声 秋風吹不尽 総是玉関情…」
 という有名な歌があります。
  「擣衣(とうい)」は、砧という丸太に柄のついたような棒で
 衣を叩いて光沢を出す作業で、静かな秋の夜にそれぞれの家庭か
 らこの音が聞こえてきて、風物詩となっていました。
  雅経のこの一首も「擣衣(とうい)」というテーマを出されて
 作った歌のようです。
  また古今集の
 「み吉野の 山の白雪つもるらし ふるさと寒くなりまさるなり」
 という歌の本歌取りにもなっています。
             ◆◇◆
  歌は、かつて古代の都の離宮があって栄えていた吉野の里が今
 は古び、晩秋の夜には里の家で砧を打つ音だけが聞こえている、
 といった内容です。
  歌に流れるような詩情があり、寂しい秋という季節がクローズ
 アップされます。
  しかもこの歌、中国の風情が上手に生かされており、想像して
 みると秋の夜長に砧の音とともに、胡弓の音色が聴こえてきそう
 な印象があります。
  みなさんも秋の詩情をイメージしてみてください。
             ◆◇◆
  百人一首には吉野の里(奈良県吉野郡吉野町)がよく登場しま
 す。近鉄吉野線吉野駅で下車すると吉野の里に到着し、春には桜
 秋には紅葉が見ごろとなります。
  吉野の山にはロープウェイで登れますが、山に登らず吉野川を
 上流にさかのぼっていくと、「紙漉きの里」があります。
  吉野は、昔から書道などには最適の上質の和紙「吉野紙」の生
 産地でもあります。複雑な工程を経て丈夫で美しい和紙を作る工
 程は、見学もできるようですので、一度見に行かれてはいかがで
 しょうか。吉野駅から車で20分ほどで到着します。

 

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