ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2001年5月10日配信】[No.024]
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 【今回の歌】

   難波(なには)江の 芦のかりねの ひとよゆゑ
    みをつくしてや 恋ひわたるべき

        皇嘉門院別当(88番) 『千載集』恋三・807

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  「ゆきずりの恋」などとよく言われたりしますが、たった一夜
 旅の宿で契り合せた人のことが恋しくて忘れられない、というよ
 うなこともありますね。百人一首にはせつない恋の歌が多いので
 すが、この歌もそうした秀歌のひとつといえます。

■□■ 現代語訳 ■□■
  
  難波の入り江の芦を刈った根っこ(刈り根)の一節(ひとよ)
 ではないが、たった一夜(ひとよ)だけの仮寝(かりね)のため
 に、澪標(みおつくし)のように身を尽くして生涯をかけて恋い
 こがれ続けなくてはならないのでしょうか。
 
■□■ ことば ■□■
 【難波江】
  摂津国難波(現在の大阪府大阪市)の入り江で、芦が群生する
 低湿地。百人一首にも何首かに取り上げられています。「芦」や
 「刈り根」、「一節」、「澪標(みおつくし)」などと縁語にな
 っています。
 【芦のかりねのひとよ】
 「難波江の芦の」までが序詞で、「かりねのひとよ」を導き出し
 ます。「かりねのひとよ」は「芦を刈り取った根(刈り根)のひ
 とふし(一節)」という意味と、「仮寝(旅先での仮の宿り)の
 一夜」という意味を掛けています。「一節(ひとよ)」は、芦の
 茎の節から節の間のことで、短いことを表しています。
 【みをつくしてや】
 「澪標(みをつくし)」は、船が入り江を航行する時の目印にな
 るように立てられた杭のことで、身を滅ぼすほどに恋こがれる意
 味の「身を尽し」と掛詞になっています。「や」は疑問の係助詞
 です。
 【恋ひわたるべき】
 「わたる」は長く続くこと。「べき」は推量の助動詞「べし」の
 連体形で、「みをつくしてや」の係助詞「や」の結びになります。
 

■□■ 作者 ■□■
  皇嘉門院別当(こうかもんいんべっとう。12世紀ごろ)
  太皇太后宮亮(たいこうたいごうぐうのすけ)源俊隆(とした
 か)の娘で崇徳院皇后(皇嘉門院)聖子(せいし)に仕えた女房
 でした。生没年は不詳ですが、1181年に出家して尼になったこと
 が記録に残されています。別当は、家政を司る役目です。

■□■ 鑑賞 ■□■

  女性の恋の歌というと、女性の許へ夫が出かけていくという、
 「通い婚」が慣習だった時代らしく、恋しい人を待つ歌が多いの
 ですが、これは旅先で一夜の契りを交わした男のことが忘れられ
 ない、という歌です。
             ◆◇◆
  旅先で出会った人との一夜限りの短い恋。難波の入り江に生え
 ている芦の切った節のように短くはかない逢瀬だったのに、それ
 ゆえに一生身を焦がすような想いがつのってしまった。
  こんな激情を「芦の刈り根」と「仮寝」、「一節(ひとよ)」
 と「一夜(ひとよ)」、「澪標(みおつくし)」と「身をつくし」
 などを掛詞としてあしらい、技巧を凝らし尽くした歌として表現
 しています。
  12世紀の頃は、難波潟のあたりには遊女が多くいたそうで、こ
 の歌はそうした遊女の立場に自分を置いて、哀しい女のはかない
 恋を歌ったようです。
             ◆◇◆
  さて、難波江というのは現在の大阪府大阪市の南部一帯の湾岸
 を指します。すでにこのメールマガジンでも、伊勢の

  難波潟 みじかき芦の ふしの間も
    あはでこの世を 過ぐしてよとや

  で紹介しましたが、大阪湾岸は開発と埋め立てが進み、歌枕と
 しての面影はあまり残っていません。ただし、海辺というのはそ
 れだけでどこか感傷を誘う場所でもあります。
  大阪湾岸といえば、最近では超大型テーマパーク、USJ(ユニ
 バーサル・スタジオ・ジャパン)の開場で人気を集めていますが
 アミューズメントプレイスに行った帰りにでも、ちょっとこの歌
 を思い出してみるのも風情があるかもしれませんね。

 

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