ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年10月10日配信】[No.077] 
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 【今回の歌】

  村雨(むらさめ)の 露もまだひぬ 槇(まき)の葉に
   霧立ちのぼる 秋の夕暮れ

         寂蓮法師(87番) 『新古今集』秋・491

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  つい先ごろ、10月だというのに戦後最大級の台風が通り過ぎて
 いきました。昭和30年代にやってきた同レベルの台風は、1200人
 もの死者を出したそうです。それに比べて、建物や防災対策が充
 実してきた現在、サッシの内側で台風情報を観ながら安全な一日
 を過ごす我々は幸せといえるのかもしれません。
  
  台風の過ぎ去った後、数日はとても良い天気でした。天文観測
 などでは、雨の後は大気のチリが払われて美しい星空が観られる
 ので歓迎されています。雨にもいろいろな恩恵があるものですね。
  今回は、雨の後の美しい情景を歌った一首をご紹介します。
  
■□■ 現代語訳 ■□■
  
  にわか雨が通り過ぎていった後、まだその滴も乾いていない杉
 や檜の葉の茂りから、霧が白く沸き上がっている秋の夕暮れ時で
 ある。
 
■□■ ことば ■□■

 【村雨】
 にわか雨のことです。
 【まだひぬ】
 「露」は雨のしずくのことです。「ひぬ」は動詞「干る」の未然
 形「ひ」に打消しの助動詞「ず」の連体形がついて、「まだ乾か
 ない」という意味になっています。
 【真木】
 「真」は美称で「良い木材になる木」のことを指しています。
 杉や檜、槇などの常緑樹全体をこう言います。
 【霧立ちのぼる】
 「霧」はもやのことですが、春なら「霞(かすみ)」秋なら「霧
 (きり)と使い分けられます。「立ち上る」は「立つ」と「のぼ
 る」の2つの動詞を合わせたもの。
 【秋の夕暮れ】
 新古今和歌集の幽玄を表す言葉で、秋は寂しい季節であり夕暮れ
 もメランコリックな時間と考えられていました。

■□■ 作者 ■□■

  寂蓮法師(じゃくれんほうし。1139〜1202)
 俗名(出家する前の名前)は藤原定長(さだなが)。藤原俊成の
 弟・阿闍梨俊海(あじゃりしゅんかい)の息子で俊成の養子です。
 30歳過ぎに出家し、全国を渡り歩いた後に嵯峨野に住みました。
 実力のあった歌人で、新古今和歌集の撰者に命じられますが、病
 気で没したため撰者とはされていません。
  
■□■ 鑑賞 ■□■

  京都の北山などへ行きますと、雨が降った後、杉木立からもや
 が立ち上り、うっとりするような幻想的な雰囲気になることがあ
 ります。
  この歌は、にわか雨が降った秋の夕暮れの幻想的な景色を詠ん
 だ一首です。
 「村雨(むらさめ)」という言葉に日本独特の情緒を感じますね。
             ◆◇◆
  よく言われるように、日本は「雨」に関する語彙がとても豊富
 な国です。それだけ雨が生活に身近だということでしょう。
  秋に降る雨だけでも、
 ●秋霖(しゅうりん)・秋にしとしと降り続く雨
 ●村雨(むらさめ)・秋のにわか雨
 ●時雨(しぐれ)・晩秋から冬にかけて急に降ったり止んだりす
 る雨のこと
  などのいろいろな言葉があります。
  この歌の中の村雨は、時雨に近いものだという説もあります。
  にわか雨の後、霧もやの中に立つ杉木立。幻想的な風景で、新
 古今集のもつ幽玄な世界を見事に表したといえるでしょう。
             ◆◇◆
  杉木立を観るなら、京都北区・洛北の中川周辺が有名です。
  川端康成の名作「古都」の舞台ともなったところで、すらりと
 伸びた美しい杉木立に秋の雨の情景が堪能できるでしょう。
  JR京都駅から「周山」行きバスに乗り「北山グリーンガーデン」
 で下車すると北山杉の里です。

 

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