ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年12月15日配信】[No.090]
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 【今回の歌】

  嘆けとて 月やはものを 思はする
   かこち顔なる わが涙かな

            西行法師(86番) 『千載集』恋・926

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
 
  昨日(14日)は、赤穂浪士が吉良邸へ討ち入りをした日でした。
  元禄12(1702)年12月14日、大雪の降る深夜。江戸は本所松坂
 町(現在の東京都墨田区両国)の吉良邸を襲撃した赤穂四十七士
 は、見事主君の敵、吉良上野介の首を挙げ、その足で泉岳寺にあ
 る浅野内匠頭の墓前に供えたのでした。
 
  さて今年は赤穂浪士討ち入りから300年目。それを記念して講
 演やお祭りなども催されるようです。お芝居で有名な討ち入りで
 すが、近松門左衛門が「碁盤太平記」を書いたのが4年後の1706年。
 「仮名手本忠臣蔵」が世に出るのは42年後の1748年です。
  しかしこれほど有名になり、300年も語り継がれるとは、よほ
 ど当時の人々にとってはショッキングな出来事だったのでしょう
 ね。
   
  さて、平安貴族の作者が多い百人一首ですが、今回ご紹介する
 のは鎌倉武士から出家し、諸国を遊行。天性の才能を謳われた漂
 泊の歌人です。
    
■□■ 現代語訳 ■□■
  
  「嘆け」と言って、月が私を物思いにふけらせようとするのだ
 ろうか? いや、そうではない。(恋の悩みだというのに)月の
 せいだとばかりに流れる私の涙なのだよ。
 
■□■ ことば ■□■

 【嘆けとて】
 「とて」は「〜と言って」という意味の格助詞で、「月が私に嘆
 けと言って」という意味です。月を人のように表す擬人法が使わ
 れています。
 【月やはものを】
 「やは」は反語を表す複合の係助詞です。下の「する」が結びで、
 「〜するのだろうか? いやそうではない」と訳します。
 【思はする】
 「する」は使役の助動詞「す」の連体形で「やは」の結びです。
 「月が物思いにふけらせるのだろうか? いやそうではない¥」
 という意味になります。
 【かこち顔なる】
 「かこち顔」は「かこつ」からきた言葉で「かこつける」、つま
 り他人(ここでは月)のせいにする、という意味です。
 【わが涙かな】
 「かな」は詠嘆の終助詞です。

■□■ 作者 ■□■

  西行法師(さいぎょうほうし。1118〜1190)
 俗名を佐藤義清(のりきよ)。鳥羽上皇に北面の武士として仕え
 ていましたが、23歳の時に家庭と職を捨てて出家、京都・嵯峨の
 あたりに庵をかまえ西行と号しました。
  出家後は、陸奥(東北地方)や四国・中国などを旅して数々の
 歌を詠み、漂泊の歌人として知られます。歌集に「山家集」があ
 り、また彼の一生は「西行物語」に詳しく語られています。
  
■□■ 鑑賞 ■□■

  西行はお坊さんでしたが、月と花を好んで歌に詠み、恋歌が多
 いことで知られます。
  旅人の自由な心がそうさせたのか、闊達で大胆な歌が多く、現
 代でも通じるようなさっぱりとした心が感じられます。
  願わくば 花の下にて春死なむ 
    その如月の望月(もちづき)のころ
  このようにひきこまれるような魅力があり、非常に人気の高い
 大歌人です。
             ◆◇◆
  この歌は「月前の恋」という題を与えられて詠んだ題詠です。
  月を見ると、自然に涙が流れてくる。恋の悩みなのに月が嘆け
 と言っているようだ。そんな月のせいにして、うらめしげに流れ
 る我が涙だなあ、というほどの意味でしょうか。
  昔から、月は物思いにふけらせ、悲しみにくれさせてしまう何
 かがあるようです。日本ではお月見という行事がある一方で、月
 を見ることは忌むべきことだとの考え方もありました。
  英語でも「ルナティック」は「気がふれた」という意味ですし、
 満月になると変身するオオカミ男の伝説もあります。
  時には青く輝き、怪しい雰囲気をかもし出す月。
  放浪を続けた西行は、そんな月を愛して月の歌を多く詠みまし
 た。鳥羽天皇の北面の武士(天皇を護る近衛兵)というエリート
 職を捨て、俗世を捨てた自分。それと日の光を見ることなく、い
 つも暗い夜空に輝いている月に相通じるものを感じたのかもしれ
 ません。
  鳥羽天皇に出家を願い出る時には、こんな歌を詠んでいます。
  をしむとて をしまれぬべき この世かは
   身をすててこそ 身をもたすけめ
             ◆◇◆
  西行は諸国を旅した人ですが、陸奥を旅した時にこんな歌を詠
 んでいます。
  あはれいかに 草葉の露の こぼるらん 
    秋風立ちぬ 宮城野の原
  宮城野は、現在の宮城県仙台市の仙台駅の東から仙台港へ通じ
 る市の北東部にあたります。
  今の時期の仙台市はちょっと寒いかもしれませんが、今年から
 「SENDAI光のページェント」と題して、青葉通と定禅寺通のケヤ
 キの木にイルミネーションが施されているそうです。JR東北線仙
 台駅下車です。

 

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