ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年2月10日配信】[No.051]
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 【今回の歌】

  長からむ 心も知らず 黒髪の
   乱れて今朝は ものをこそ思へ

          待賢門院堀河(80) 『千載集』恋三・802

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  冬まっただ中の2月。今年はやや暖冬のようですが、それでも
 寒さは身にしみますね。
 
  さて、寒いながらも恋人同士手をこすりあったりしていると、
 2人の心もほっかほかになるというもの。
 しかし独りになると男性が浮気しないかちょっと心配、なんてこ
 とも…。そんな気がかりも恋を深めるきっかけかもしれませんが
 今回紹介する歌も、不安に揺れる微妙な女心を歌ったものです。

■□■ 現代語訳 ■□■
  
 (昨夜契りを結んだ)あなたは、末永く心変わりはしないとおっ
 しゃっいましたが、どこまでが本心か心をはかりかねて、お別れ
 した今朝はこの黒髪のように心乱れて、いろいろ物思いにふけっ
 てしまうのです。
 
■□■ ことば ■□■

 【長からむ心】
 「末永く変わらない(相手の男の)心」の意味です。「む」は推
 量の助動詞。「長し」と後の「乱れて」は「黒髪」の縁語です。
 【知らず】
 「ず」は打消の助動詞の連用形で、「(相手の心を)はかりかね
 て」というような意味です。
 【黒髪の乱れて】
 「黒髪が寝乱れて」という意味ですが、下の「今朝はものをこそ
 思へ」にも続いて「心が乱れて」という2重の意味になります。
 【今朝は】
 そのまま「今朝は」という意味ですが、男女が共に寝た翌朝、す
 なわち「後朝(きぬぎぬ)」であることを表しています。
 【ものをこそ思へ】
 「こそ」は強意の係助詞で「思へ」は四段活用動詞「思ふ」の已
 然形。「こそ〜思へ」で係結びになっています。

■□■ 作者 ■□■

 待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ。12世紀ごろ)
  神祇伯(じんぎはく)・源顕仲(みなもとのあきなか)の娘で
 崇徳院の生母、待賢門院(鳥羽院の中宮・璋子(しょうし))に
 仕えて「堀河」と呼ばれました。息子の崇徳院は天皇在位後政略
 で退位させられますが、その時に待賢門院も追放され、堀河も一
 緒に出家しています。
  
■□■ 鑑賞 ■□■

  昨夜一晩を一緒に過ごし、契りを結んだあなた。翌朝帰ってい
 ってから、後朝(きぬぎぬ)の歌をいただいて「いつまでも末長
 くあなたのことが好きですよ」と言葉をもらったけれども、その
 言葉はどこまで本当なのでしょうか。お別れした後、あなたの心
 をはかりかねて、この私の寝乱れた黒髪のように、心乱れて思い
 悩むばかりですわ。
             ◆◇◆
  この歌は、百人一首にも歌がある崇徳院の命で作られた「久安
 (きゅうあん)百首」にあるものです。久安百首は、いくつかの
 テーマごとに歌を詠んで合計で百首にするというもの。
  この歌は、男が届けてきた後朝の歌に対する返歌という趣向で
 詠まれました。
  そもそも平安時代というのは男性が女性の家に行って一晩を明
 かすという慣習がありました。「後朝」というのは男と女が一晩
 を明かした翌朝で、男が帰った後で女の許へ「昨夜はとても幸せ
 だった」と一首詠んで贈る、という雅な慣習があったのです。
  それに対して女性が返したのがこの一首というわけです。
             ◆◇◆
  この歌、女性が「あなたの誠意は本当でしょうか、心配です」
 という繊細な女性の心の表現がだいたいの意味ですが、「黒髪の
 乱れて」というところなどに、情事の後のエロティックな雰囲気
 が現れていますよね。心配です、なんていいながら男心の気を引
 く、平安女性の激情と愛のテクニックが現れている、といってい
 いでしょう。
  この歌はこの「黒髪」の表現の美しさで、百人一首の中でも際
 だっています。黒髪の乱れ、という女性の愛の表現は、後の世の
 与謝野晶子の歌「黒髪の 千すじの髪の みだれ髪 かつおもひ
 みだれ おもひみだるる」などでとみに有名になっています。
 日本女性の美しさの象徴として、黒髪が扱われているといってい
 いでしょう。
             ◆◇◆
  さて、この歌には地名が詠み込まれていません。そこで、その
 歌集「みだれ髪」で有名になった与謝野晶子についてですが、大
 阪府堺市の生まれで、その歌人としての業績を讃えて堺市の堺市
 立文化館に、与謝野晶子館が設けられています。
  行かれる場合は、大阪のJR阪和線「堺市」駅で降りてすぐ、と
 なります。「君死にたまうことなかれ」で日本女性の心を描いた
 歌人の足跡をたどってみられてはいかがでしょうか。

 

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