ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年9月20日配信】[No.073] 
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 【今回の歌】

  寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば
   いづこも同じ 秋の夕暮れ

         良暹法師(70番) 『後拾遺集』秋・333

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  9月中旬といえば、ちょうど小中学校などの体育祭などが終わ
 って、街の賑やかさが一段落ついている頃でしょうか。
  賑やかさが落ち着くと、秋はぐっと深まり、少し人生のことだ
 とか恋やもろもろのことを考え込む人もいるでしょう。
  きっと秋だからでしょうね。
  秋はメランコリーの季節といいます。
  
  メランコリーというと、最近ではすぐ「鬱」なんて暗い方向に
 話題が進みがちです。
  しかし、秋にメランコリーを感じるのには原因があるそうです。
  鬱の原因のひとつには光を浴びる時間が減ることがあるといい
 ますが、秋は夏に比べて日照時間が短かくなっていきますよね。
  そうすると、ちょっと哀しい気分になりやすいんだそうです。
  最近では不眠症の人も多く、夜起きている時間が長く日光に当
 たる時間が減るとイライラがつのったり、無性に気分が落ち込ん
 だりもするようです。また、雨の日や曇りの日も同じだそう。
  
  逆に言えば、気分の落ち込みは単に季節のせいだと思っちゃえ
 ば、気が楽になるでしょう? 甘いものを食べると楽しい気分に
 もなりやすいそうですから、美味しい秋の味覚、焼きいもでも食
 べて、メランコリーをふっとばし、秋の楽しさを満喫しましょう。
  さて今回は、世捨て人になった作者が、秋の寂しさをしみじみ
 と感じるいい歌です。
  
■□■ 現代語訳 ■□■
  
  あまりにも寂しさがつのるので、庵から出て辺りを見渡してみ
 ると、どこも同じように寂しい、秋の夕暮れがひろがっていた。
 
■□■ ことば ■□■

 【寂しさに】
 平安時代の「寂しさ」は、秋や冬の寂寞とした感じを表します。
 特に一人住まいや無人の荒れ果てた家や野山など、あまり人がい
 ない場所の寂しさを示しています。
 格助詞「に」は原因や理由を表し、全体で「さびしさのせいで」
 という意味になります。
 【宿を立ち出でて】
 この場合の「宿」は自分が住んでいる庵のことです。「庵を出て」
 という意味になります。
 【眺むれば】
 下二段動詞「眺む」は、単に眺めているだけではなく、「いろい
 ろな思いにふけりながらじっと長い間見ている」というニュアン
 スがあります。「眺む」の已然形に接続助詞「ば」がつき、順接
 の確定条件を表します。
 【いづこも同じ秋の夕暮れ】
 「どこも同じように寂しい秋の夕暮れがひろがっていた」という
 意味です。「同じ」は形容詞の連体形の特殊な形です。最後の体
 言止めの「秋の夕暮れ」は、定家の編纂した新古今集の時代に流
 行した結句(むすびのことば)でした。

■□■ 作者 ■□■

  良暹法師(りょうせんほうし。生没年未詳、11世紀前半の人)
 山城国愛宕郡(おたぎのこおり)の生まれで、父親は分かりませ
 んが、母親は藤原実方家の童女白菊だったという説があります。
 比叡山の僧侶で祇園の別当であり、晩年は洛北大原の雲林院に隠
 棲したと言われます。
  
■□■ 鑑賞 ■□■

  僧になって、比叡山で修行をしていたが、老いてきたので山を
 降り、洛北大原に貧しい草の庵を構えて住み始めた。
  しかし、修行の場とはいえ、賑やかだった比叡山と比べると、
 人っ子ひとりいないこの土地での生活は寂しくてたまらない。
  あまりに寂しいので、庵から出てあたりをしばらく歩き、山や
 野を眺めてみた。
  しかし、どこも静まりかえって寂しいのは同じ。無人の野山に
 秋の夕暮れが訪れている。
             ◆◇◆
 「秋の夕暮れ」という結びの言葉は、藤原定家が編者となった新
 古今和歌集の時代には、一種の流行になっていました。新古今集
 の美学のひとつである幽玄の世界、叙情的な景色を表すのにふさ
 わしい言葉だったのでしょう。
  確かに「秋の夕暮れ」という言葉だけで、詩的な寂しさをイメ
 ージすることができますよね。
 「秋の夕暮れ」という結句では、百人一首では寂蓮法師の
  村雨の 露もまだひぬ 真木の葉に 霧立ち上る 秋の夕暮れ
 という歌がありますし、みなさんもご存じのように、寂蓮・西行
 ・定家が作った有名な「三夕(さんせき)の歌」もあります。
  三夕の歌については、寂蓮法師の回でまたご紹介することにし
 ましょう。ただ、それほど数多くの名歌が詠まれるほど、「秋の
 夕暮れ」はブームだったということになります。
             ◆◇◆
  詞花集での詞書によると、この歌は「大原にすみはじめけるこ
 ろ」詠んだということです。だから作者は、僧侶が数千人もいた
 とされる比叡山から、たった一人で大原に移ってきたばかりだっ
 たのでしょう。
  意を決してひとりで修行をはじめたものの、話を交わす友達は
 おろか、誰も見かけない山里での暮らし。僧侶といえども寂しさ
 はつのるばかりです。庵に籠もっているのもなんだから、外へ出
 てみようか、と歩き回っても誰もいない。
  寂寥とした山里に、夕暮れ時が迫ってきて、しみいるようなメ
 ランコリーが心にじーんとしみわたってくる。
  新古今集には、こうした枯れゆくような寂寥感を美しいとする
 感覚が大切にされました。
  野山の緑の少ない都会に住み、コンクリートの谷間であくせく
 忙しい時間を過ごす私たち。疲れたときに「いっそ作者のように
 人のいない山里に隠遁してしまいたい」なんて思うかもしれませ
 ん。作者もそう思ったのかもしれませんね。
  けれど、いざ山里に住みはじめると、そこでは人恋しさがつの
 ってばかりだったのです。
  とても秋らしい、寂しさの中にほろ苦さが混じる、枯れた味わ
 いのある歌です。
             ◆◇◆
  さて、この作者の詳しい伝記は伝わっておりませんが、今は季
 節が秋。山里はそろそろ紅葉が美しく赤らんできます。そこで、
 近畿地方の紅葉の名所をいくつかご紹介しましょう。
  紅葉はおおむね11月中旬からが最高の時期のようです。
  今から計画をたてておきましょう。
 ●三重……赤目四十八滝:近鉄大阪線・赤目口駅で下車します。
 ●滋賀……比叡山:京阪電鉄・出町柳駅から叡山鉄道に乗り、八
      瀬遊園駅で下車。叡山ケーブルとロープウェイで頂上
      に到着します。
    ……永源寺:JR東海道線・米原駅から近江鉄道に乗り、八
      日市駅で下車。さらに近江バスに乗ります。
 ●京都……嵐山・嵯峨野:JR嵯峨野線・嵐山駅で下車
    ……大原・三千院:JR京都駅から市バスに乗り、大原バス
             停で下車。
    ……南禅寺:京阪電鉄・京阪蹴上駅で下車。
 ●大阪……箕面:阪急電車・箕面駅下車
 ●奈良……吉野山:近鉄吉野線・吉野駅で下車した後、ロープウ
      ェイで登るのが便利
    ……奈良公園:JR奈良駅から、市バス・大仏殿春日大社前
      バス停で下車
 ●兵庫……有馬:JR三宮駅から神戸市営地下鉄に乗り、谷上駅か
      ら神戸電鉄・有馬駅で下車。
 ●和歌山…高野山:JR大阪駅から環状線・難波駅で下車し、南海
      電鉄に乗り高野山駅で下車します。

 

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