ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

『ちょっと差がつく百人一首講座』バックナンバー一覧へ

【2002年12月30日配信】[No.093]
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 【今回の歌】

  春の夜の 夢ばかりなる 手枕(たまくら)に
   かひなく立たむ 名こそ惜しけれ

            周防内侍(67番) 『千載集』雑・961

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
 
  この一年、弊庵「小倉山荘」のお菓子、並びに当メールマガジ
 ンをご愛顧ご愛読賜り、誠にありがとうございました。
  皆様、よいお正月をお迎えください。
  来年もよろしくお願いいたします。
 
  いよいよ明日は大晦日。一年の最後の一日です。
 大掃除(すすはらい)を済ませ、しめ飾りや門松を買って飾り、
 新年に食べるおせち料理の準備をしたりお餅をついたり。
  早めにお風呂に入って、年越しそばといわしを食べ、紅白を見
 ながら除夜の鐘を聴く。
  今ではここまで典型的な年越しを行う人も珍しいでしょうし、
 おせちを作る家は夜遅くまで、料理に忙しかったりします。
  ゆっくり団らんとはいかないかもしれませんが、一年の最後の
 一日くらい、家族でこたつに入ってゆっくりくつろぎたいもので
 す。そして、過ぎゆく一年に思いをはせましょう。
 
  さて今号は、1月2日に見る初夢にちなんで、夢の歌をご紹介
 します。
  
■□■ 現代語訳 ■□■
  
  短い春の夜の、夢のようにはかない、たわむれの手枕のせいで
 つまらない浮き名が立ったりしたら、口惜しいではありませんか。
 
■□■ ことば ■□■

 【春の夜の夢ばかりなる】
 「春の夜」は短くすぐ明けてしまうはかないもの、というイメー
 ジがあり、「夢」もまたはかないものと考えられています。「ば
 かり」は程度を示す副助詞で、「なる」は断定の助動詞「なり」
 の連体形。全体で「短い春の夜の夢のようにはかない」という意
 味になります。
 【手枕(たまくら)に】
 「手枕(たまくら)」とは、腕を枕にすることで、男女が一夜を
 過ごした相手にしてあげます。
 【かひなく立たむ】
 「かひなく」は「何にもならない」「つまらない」という意味に
 なります。また「手枕(たまくら)」にする「腕(かひな)」が
 掛詞として入っています。「立たむ」の「む」は推量の助動詞で
 「もし(噂が)立ったら」というような意味になります。
 【名こそ惜しけれ】
 「名」は「評判」や「浮き名」のことで、「こそ」は係助詞です。
 全体で「浮き名や噂が立ったら、口惜しいではありませんか」と
 いう意味になります。

■□■ 作者 ■□■

  周防内侍(すおうのないし。11世紀〜1109年ころ)
 周防守・平棟仲(たいらのむねなか)の娘で後冷泉、後三条、白
 河、堀河天皇に女房として仕えました。本名は仲子(ちゅうし)
 です。女房三十六歌仙のひとりで「周防内侍集」を残しました。
 出家後の1109年頃、70数歳で病のため亡くなったとされています。
  
■□■ 鑑賞 ■□■

  この歌には面白いエピソードがあり、千載集の詞書で紹介され
 ています。
  陰暦2月頃の月の明るい夜、二条院で人々が夜通し楽しく語ら
 っていた時のこと。周防内侍が眠かったのか何かに寄りかかって
 「枕がほしいものです」とつぶやきました。すると時の大納言・
 藤原忠家(ただいえ)が、「これを枕にどうぞ」と言って自分の
 腕を御簾の下から差し入れてきました。
  要するに、「私と一緒に一夜を明かしませんか」とからかった
 のでしょう。
             ◆◇◆
  それに対し、内侍が機転をきかせてこの歌を詠んだのでした。
 (まあ、おからかいを。短い春の夜のはかない夢のような、戯れ
 の手枕にからだをあずけてしまって、つまらない浮いた噂が立っ
 てしまうのは、くやしいことですから)。
  今なら上司のセクハラ! と怒るところかもしれません。しか
 し「かひなく」に「腕(かいな)」を掛け、春や夢、手枕と艶っ
 ぽい言葉を散りばめたテクニックは、当意即妙で見事です。
  きっと宮廷内は笑いと感嘆の声に包まれたのではないでしょう
 か。当時の御所の暮らしが想像できる楽しいエピソードです。
             ◆◇◆
  作者・周防内侍は、
 「恋ひわびて 眺むる空の浮雲や わが下もえの煙なるらむ」
 という一首を詠み「下もえの内侍」とあだ名されました。「下も
 え」とは、心の底に秘めた燃える恋心という意味ですが、艶な響
 きもあります。周防内侍は頭の回転が速いだけでなく、エロティ
 ックな歌も得意としていたようで、きっと今ならざっくばらんで
 活発な女性として、人気を呼んだのではないでしょうか。
             ◆◇◆
  作者の父は周防守。周防国は、現在の山口県の東半分にあたり
 ます。
  県庁所在地の山口市は、大内氏が室町時代に作った古都で国宝
 の五重塔をはじめ、県政資料館、サビエル記念聖堂や、雪舟、若
 山牧水、中原中也、司馬遼太郎などにちなんだ見所が各所にあり
 ます。JR山口駅で降り、観光案内片手に市内をめぐってみてはい
 かがでしょうか。

 

『ちょっと差がつく百人一首講座』バックナンバー一覧へ


せんべい,煎餅,おかき,あられ,おせんべい【長岡京小倉山荘】
京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】TOPへ