ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年11月30日配信】[No.087]
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 【今回の歌】

  恨みわび ほさぬ袖(そで)だに あるものを
   恋(こひ)に朽ちなむ 名こそ惜しけれ

             相模(65番) 『後拾遺集』恋・815

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  11月も今日で終わり。明日からは12月、師走です。
  年賀状の準備はお済みでしょうか?
 年賀状といえば、今は手書きよりプリンタ印刷が優勢という時代
 になりました。しかしそもそものはじめは、平安時代の貴族たち
 が年が明けてからお互いに交換する新春の手紙だったそうです。
  郵便による年賀状がはじまったのは明治時代に入ってからで、
 制度がまとまったのは明治34(1899)年だそうです。当時は交通
 が不便だったため、正月に届けようとして遭難死した局員さんも
 いたとか。

  お正月の年賀状は、お世話になった人への感謝の挨拶と同時に
 自分がしっかりした生活を送っているという証でもあります。
  いわば名を朽ちさせないための知らせでしょうか。今回は、恋
 に破れて名誉まで失いそうな女性の一首です。
 
  
■□■ 現代語訳 ■□■
  
  恨んで恨む気力もなくなり、泣き続けて涙を乾かすひまもない
 着物の袖さえ(朽ちてぼろぼろになるのが)惜しいのに、さらに
 この恋のおかげで悪い噂を立てられ、朽ちていくだろう私の評判
 が惜しいのです。
 
■□■ ことば ■□■

 【恨みわび】
 「〜わぶ」は「気力を失う」という意味。「恨む気力も失って」
 という意味です。
 【ほさぬ袖(そで)だに】
 「ほさぬ袖」は、いつも泣いて涙を拭いているので「乾くひまも
 ない袖」という意味です。副助詞「だに」は「〜でさえ」のよう
 な意味で、程度の軽いものを示して、重いものを類推させます。
 【あるものを】
 「ある」の前に「口惜し」を補って考えます。「ものを」は詠嘆
 をこめた逆接の接続助詞で「袖が朽ちるのさえ悔しいのだから」
 と、後で恋で悪い噂が立つことと比較しています。
 【恋(こひ)に朽ちなむ 名こそ惜しけれ】
 「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形で、「む」は推量の助動詞
 「む」の連体形です。「名」は「評判」の意味で、「こそ」は強
 調の係助詞です。また「惜しけれ」は形容詞「惜しき」の已然形
 で「こそ」の結びになります。「失恋の噂で汚れてしまいそうな
 私の評判がとても残念だ」という意味になります。

■□■ 作者 ■□■

  相模(さがみ。998?〜1068?)
 源頼光(よりみつ)の娘、もしくは養女と言われます。相模守の
 大江公資(きみより)の妻となり任国へ一緒に行ったので、相模
 と呼ばれるようになりました。歌論集「八雲御抄(やくもみしょ
 う)」では赤染衛門、紫式部と並ぶ女流歌人として高く評価され
 ています。しかし実生活では悩みが多く、公資と別れた後、権中
 納言藤原定頼(さだより)や源資道(すけみち)と恋愛しました
 が上手くいきませんでした。一条天皇の第一皇女、脩子内(しゅ
 うしない)親王の女房となり、歌人としての評価を固めました。
  
■□■ 鑑賞 ■□■

  「後拾遺集」からの一首です。後拾遺集は、白河天皇の命で藤
 原通俊(みちとし)が応徳3(1086)年に完成させた勅撰和歌集
 で、拾遺集から漏れた歌人の歌を約1200首収録しています。
             ◆◇◆
  この歌は失恋の歌で、振り返ってくれない男を恨んで恨む気力
 もなくすほど疲れた女性の歌になっています。
  泣いて袖が涙で濡れ続けてぼろぼろになるのさえ惜しいのに、
 「恋に破れて毎日泣いているんだそうだ」と噂されて、さらに私
 の評判まで落ちるなんて、なんと悔しいのでしょう、と歌は語っ
 ています。
             ◆◇◆
  作者の相模という女性も、結婚生活がうまくいかず悩みぬいた
 人であるらしく、この歌には実感がこめられています。夫と一緒
 に相模国(現在の神奈川県)に下り、箱根権現に百首歌を奉納し
 ましたが、中には嘆き悲しむ歌が多く含まれていたということで
 す。また、子を願う歌も多かったそうで、夫との不仲の原因もそ
 こにあるのかもしれません。
  とはいえ、悲しい歌ばかりではなく、非常に艶のある秀歌も数
 多く詠んでいる名人でもあります。百人一首の撰者・藤原定家は
 相模の恋歌が好きで、定家撰の歌集には彼女の歌が多く採用され
 ています。
             ◆◇◆
  相模がお参りした箱根神社は、富士山を望む芦ノ湖の東のほと
 りにあります。奈良時代末期に万巻上人が建立し、源頼朝や徳川
 家康などの武将も信心しました。神社の宝物殿に貴重な文化財が
 集められています。訪れる場合は、東京からなら小田急で箱根湯
 元駅からバスで約1時間。JRの新幹線三島駅からも箱根行きのバ
 スが出ています。

 

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