ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年11月15日配信】[No.084]
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 【今回の歌】

  夜をこめて 鳥の空音(そらね)は 謀(はか)るとも
   よに逢坂(あふさか)の 関は許(ゆる)さじ

           清少納言(62番) 『後拾遺集』雑・940

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  今月21日は冬至(とうじ)。1年で一番夜の長い日です。
  冬至は「一陽来復(いちようらいふく)」とも言います。冬至
 を過ぎると日がゆっくり長くなり、太陽が戻ってくるからですが
 気候のずれの関係で、日本で一番寒いのは2月。これから冬へ向
 かって季節がなだれこんでいきます。
 
  ところで、冬至の行事というと「ゆず湯」。銭湯などではゆず
 が入った袋を入れたりしますし、ご自宅でも風呂に皮などを浮か
 べて良い香りを楽しんだりされることでしょう。
  なぜ冬至にゆず湯を立てるかというと、実は「冬至=湯治(と
 うじ)」という語呂合わせなんだそうです。
  湯治に語呂をかけて、これからの冬を無事に過ごせるように、
 ゆず湯でぽかぽかに暖まろう、という昔の人の知恵なんでしょう。

  さて今回の一首は、日本を代表する名エッセイ「枕草子」を書
 いた清少納言です。ほとばしる才気は歌に現れ、語呂合わせがい
 っぱい出てきます。
  
■□■ 現代語訳 ■□■
  
  夜がまだ明けないうちに、鶏の鳴き真似をして人をだまそうと
 しても、函谷関(かんこくかん)ならともかく、この逢坂の関は
 決して許しませんよ。(だまそうとしても、決して逢いませんよ)
 
■□■ ことば ■□■

 【夜をこめて】
 動詞の連用形「こめ」は、もともと「しまい込む」とか「包みこ
 む」などの意味です。「夜がまだ明けないうちに」という意味に
 なります。
 【鳥の空音(そらね)は】
 「鳥」は「にわとり」で、「空音」は「鳴き真似」のことです。
 【謀(はか)るとも】
 「はかる」は「だます」という意味になります。「とも」は逆接
 の接続助詞で「〜しても」という意味です。
 「鶏の鳴き真似の謀ごと」とは、中国の史記の中のエピソードを
 指しています。
 【よに逢坂(あふさか)の関は許(ゆる)さじ】
 「よに」は「決して」という意味です。「逢坂の関」は男女が夜
 に逢って過ごす「逢ふ」と意味を掛けた掛詞です。「逢坂の関を
 通るのは許さない」という表の意味と「あなたが逢いに来るのは
 許さないA」という意味を掛けています。

■□■ 作者 ■□■

  清少納言(せいしょうなごん。966?〜1027?)
 百人一首36番の清原深養父(きよはらのふかやぶ)のひ孫で、42
 番の清原元輔(もとすけ)の娘です。学者の家に生まれ、子供の
 頃から天才ぶりを発揮し、橘則光(たちばなののりみつ)との離
 婚後、一条天皇の皇后定子(ていし)に仕えました。ご存じの通
 り、名エッセイ「枕草子」を書いた才女です。
  
■□■ 鑑賞 ■□■

  この歌には、清少納言の深い教養と頭の良さがよくわかるエピ
 ソードがあります。それをご紹介しましょう。
             ◆◇◆
  ある夜、清少納言のもとへやってきた大納言藤原行成(ゆきな
 り)は、しばらく話をしていましたが、「宮中に物忌みがあるか
 ら」と理由をつけて早々と帰ってしまいました。
  翌朝、「鶏の鳴き声にせかされてしまって」と言い訳の文をよ
 こした行成に、清少納言は「うそおっしゃい。中国の函谷関(か
 んこくかん)の故事のような、鶏の空鳴きでしょう」と答えます。
             ◆◇◆
  「函谷関の故事」というのは、中国の史記にある孟嘗君(もう
 しょうくん)の話です。秦国に入って捕まった孟嘗君が逃げると
 き、一番鶏が鳴くまで開かない函谷関の関所を、部下に鶏の鳴き
 真似をさせて開けさせたのでした。
  清少納言は「どうせあなたの言い訳でしょう」と言いたかった
 のです。それに対して行成は「関は関でも、あなたに逢いたい逢
 坂の関ですよ」と弁解します。
  そこで歌われたのがこの歌です。「鶏の鳴き真似でごまかそう
 とも、この逢坂の関は絶対開きませんよ(あなたには絶対逢って
 あげませんよ)」という意味です。
  即座にこれだけの教養を盛り込んだ歌を返すとは、さすが清少
 納言。ずば抜けた知性を感じさせますが、男の立場から言えば、
 ちょっと怖いかな?
             ◆◇◆
  逢坂関は、東海道で京都への東からの入り口とされ、古くから
 交通の要所でした。8世紀の終わりには関所が置かれています。
  逢坂の関の跡は、京都からほど近い滋賀県大津市にあり、京阪
 電車京津線大谷駅で下車して歩いて2分ほどのところです。
  また清少納言のこの歌には歌碑(歌を石に彫りつけたもの)が
 あり、京都市東山区の泉湧寺(せんゆうじ)に置かれています。
  京都駅から市バスで泉湧寺バス停で降り、徒歩数分の距離にあ
 ります。

 

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