ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

『ちょっと差がつく百人一首講座』バックナンバー一覧へ

【2000年12月10日配信】[No.009]
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 【今回の歌】

   大江(おほえ)山 いく野の道の 遠(とほ)ければ
     まだふみもみず 天の橋立

     小式部内侍(60番) 『金葉集』雑上・550

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

  前回、権中納言定頼の歌を紹介しましたので、今回は定頼との
 エピソードで有名な小式部内侍の歌を紹介しましょう。内侍は、
 和泉式部の娘。幼いときから天才的な歌才を見せた人ですが、あ
 まりに歌の出来がいいので、母の和泉式部の代作だろうと思われ
 ていました。
 
■□■ 現代語訳 ■□■
  大江山を越え、生野を通る丹後への道は遠すぎて、まだ天橋立
 の地を踏んだこともありませんし、母からの手紙も見てはいませ
 ん。

■□■ ことば ■□■
  【大江(おほえ)山】
  丹波国桑田郡(現在の京都府西北部)の山。鬼退治で有名な丹
  後の大江山とは別。大枝山とも書く。
  【いく野の道】
  生野は、丹波国天田郡(現在の京都府福知山市字生野)にある
  地名で、丹後へ行くには生野の里を通りました。
  この「いく野」には「野を行く」の「行く」を掛けています。
  【遠ければ】
  遠いので、という意味です。形容詞「遠し」の已然形に、確定
  の助詞「ば」を付けています。
  【まだふみも見ず】
  「ふみ」に「踏み」と「文(ふみ)」つまり手紙を掛けた掛詞
  (かけことば)です。行ったこともないし、母からの手紙もま
  だ見てはいない、ということを重ねて表しています。さらに、
  「踏み」は「橋」の縁語でもあります。小式部内侍の華麗なテ
  クニックが伺えるでしょう。
  【天の橋立】
  丹後国与謝郡(現在の京都府宮津市)にある名勝で、日本三景
  のひとつです。
  
■□■ 作者 ■□■
  小式部内侍(こしきぶのないし。1000?〜1025)。
  橘道貞(たちばなのみちさだ)の娘で、母親は和泉式部(「和
 泉式部日記」で有名。百人一首56番に収載)。一条天皇の中宮彰子
 (しょうし)に仕えました。幼少時から才気を謳われ、この歌をめ
 ぐる定頼とのエピソードは非常に有名で、多くの説話集に収められ
 ています。若くして逝去しました。
■□■ 鑑賞 ■□■
  この歌については、「金葉集」に長い詞書が付けられています。
  当時、小式部内侍は年少ながら非常に歌が上手いと評判でした。
 しかし、あまりに上手なので、母の和泉式部が代作しているのでは
 ないかと噂が出るほどでした。
              ◆◇◆
  ある日小式部内侍は歌合(歌を詠み合う会)に招かれますが、そ
 の頃、母の和泉式部は夫とともに丹後国に赴いており不在でした。
  そこで、同じ歌合に招かれていた藤原定頼が、意地悪にも「歌は
 如何せさせ給ふ。丹後へ人は遣しけむや。使、未だまうで来ずや」
 と尋ねました。つまり「歌会で詠む歌はどうするんです? お母様
 のいらっしゃる丹後の国へは使いは出されましたか? まだ、使い
 は帰って来ないのですか」と、代作疑惑のことを皮肉ったのです。
  そこで、小式部内侍が即興で歌ったのがこの歌です。
              ◆◇◆
  「大江山へ行く野の道(生野の道)は遠いので、まだ行ったこと
 はありませんわ(手紙なんて見たこともありませんわ)。天の橋立
 なんて」。
  生野と行くと掛け、さらに「踏みもみず」と「文も見ず」を掛け
 た華麗な歌。これを即興で詠むことで、小式部内侍は、これまでの
 歌が全部自分の才能の賜であり、噂はデタラメであることをずばり
 と証明してみせたのです。
  定頼はさだめし驚いたことでしょう。今で言うなら、部長のセク
 ハラ発言を、ずばり自分の才知で切り返してしまった新入女子社員
 といったところでしょうか。
  このエピソードは非常に有名になり、後の多くの物語や研究書に
 も引用されました。内侍が若くして逝去したことが惜しまれます。
             ◆◇◆
  この歌で詠まれた「天の橋立」は、日本三景のひとつに数えられ
 る名勝です。現在の京都府宮津市の宮津湾にあり、3.3キロにも及
 ぶ細長い松林が、湾を塞いで伸びています。この姿から、イザナギ
 ノミコトが天にかけた梯子が倒れたとの伝説を生み、平安期から幾
 多の文人達が訪れました。
  天橋立を望む笠松公園は、両足を広げて股の間から覗く「股のぞ
 き」の場所として有名です。訪れる場合は、JR山陰線を乗り継ぎ、
 宮津線天橋立駅で下車します。

 

『ちょっと差がつく百人一首講座』バックナンバー一覧へ


せんべい,煎餅,おかき,あられ,おせんべい【長岡京小倉山荘】
京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】TOPへ