ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2000年11月10日配信】[No.006]
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 【今回の歌】

   有馬(ありま)山 猪名(ゐな)の笹原 風吹けば
     いでそよ人を 忘れやはする

 大弐三位(58番) 『後拾遺集』恋二・709

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  前回は紫式部の歌でしたので、今回はその娘の大弐三位の歌を
 取り上げます。百人一首には藤原俊成、定家をはじめとして何組
 か親子で採録されています。彼女らもそのうちの一組です。

■□■ 現代語訳 ■□■
  有馬山の近くにある猪名(いな)にある、笹原に生える笹の葉
 がそよそよと音をたてる。まったく、そよ(そうよ、そうですよ)
 どうしてあなたのことを忘れたりするものですか。

■□■ ことば ■□■
  【有馬山】
  摂津の国・有馬郡(現在の兵庫県神戸市北区有馬町)にある山
 です。昔から猪名(いな)とは組でよく歌に詠まれます。
  【猪名(いな)の笹原】
  有馬山の南東にあたる、摂津の国猪名川に沿った平地。現在の
 兵庫県尼崎市・伊丹市・川西市あたりになります。昔は、この辺
 りは一面に笹が生えていました。
  【風吹けば】
  風が吹いたら。有馬山から風吹けば、までの上の句全体は、下
 の「そよ」という言葉を引き出すための「序詞(じょことば)」
 です。
  【いでそよ】
  「いで」は「いやはや、まったく」などの意味の副詞。「そよ」
 は笹がたてるさらさらという葉ずれの音を示すとともに「そうよ」
 だとか「そうなのよ!」などの意味もあります。二重の意味を持つ
 「掛詞(かけことば)」です。シャレのようなものですが、短歌
 では重要なテクニックのひとつです。
  【人を忘れやはする】
  「人」はこの場合、相手の男のことで、「やは」は反語の助詞。
 どうしてあなた(人)を忘れることができるでしょう、というよう
 な意味です。
  
■□■ 作者 ■□■
  大弐三位(だいにのさんみ。999〜?)。
  紫式部の娘、藤原賢子(ふじわらのかたこ)のこと。母の紫式
  部同様、一条天皇の中宮彰子に仕え、越後弁(えちごのべん)
  と呼ばれていた。16歳の時に母は他界、その後藤原兼隆の妻と
  なった。後に後冷泉天皇の乳母(めのと)となり、30代半ばに
  太宰大弐正三位・高階成章(たかしなのしげあきら)と結婚し
  たので、大弐三位と呼ばれました。
■□■ 鑑賞 ■□■
  詞書には「離れ離れ(かれがれ)なる男の「おぼつかなく」な
 ど言ひたりけるに詠める」とあります。しばらく来なかった男が、
 「不安です(あなたが心変わりしていないかと思って)」と手紙
 を寄越してきたので、「よくもそんなことが言えますこと」という
 ような気持ちで返した歌というわけです。
             ◆◇◆
  全然音沙汰がなかったくせに、ずいぶんしてから、「あなたが
 心変わりしてないか心配でたまりません」なんて、身勝手な男の
 言いぐさですよね。そこを、現在の兵庫県にある有馬山近くの笹
 に風が吹く時、笹が「そよそよ」と音を立てるのに引っかけて、
 「そうよ、ほんとにそうなのよ。忘れているのはあなたの方じゃ
 ございませんこと?」と優雅な歌でちょっと嫌みを言ったのです
 ね。平安女性のしたたかな愛の表現といえるかもしれません。
             ◆◇◆
  この歌に登場する「猪名」は兵庫県南東部の猪名川の両岸に広
 がる平地で、一面の笹原でした。万葉の昔から「猪名」と「有馬
 山」は一対にして詠まれることが多い場所です。
 「しなが鳥 猪名野を来れば有馬山 夕霧立ちぬ 宿(やどり)
 はなくて」(万葉集巻7 作者未詳)
  有馬山の一帯を眺めるには、神戸市六甲山の六甲ロープウエー
 で山頂へ登り、北から東の方角を眺めてみるのもいいかもしれま
 せん。付近には有馬温泉などもあり、行楽のついでに、歌の古里
 を見てみるのも一興です。

 

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