ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2001年2月20日配信】[No.016]
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 【今回の歌】

   滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
     名こそ流れて なほ聞こえけれ

        大納言公任(55番) 『千載集』雑上・1035

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  名作というのは、いつまでも語り継がれ、歌い継がれるもので
 す。それを作った本人が亡くなってしまっても、その作品と心は
 世の人々の間で生き続けます。百人一首も800年間生き続けた名作
 群ですが、今回はそれを象徴するような作品を紹介します。
 
■□■ 現代語訳 ■□■
  滝の流れる水音は、聞こえなくなってからもうずいぶんになる
 けれども、その名声だけは流れ伝わって、今でも人々の口から聞
 こえていることだよ。
 
■□■ ことば ■□■
 【滝の音は】
 滝の流れ落ちる水音は
 【絶えて久しくなりぬれど】
 「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形で、「聞こえなくなって
 長くたつけれど」という意味を表しています。
 【名こそ】
 「名」は名声や評判のこと。「こそ」は強調の係助詞です。
 【流れて】
 流れ伝わって、という意味を表します。「流れ」は滝の縁語です。
 【なほ聞こえけれ】
 「なほ」は「それでもやはり」の意味の副詞です。「けれ」は、
 前の「こそ」を結ぶ言葉で「けり」の已然形となります。
  
■□■ 作者 ■□■
  大納言公任(だいなごんきんとう。
        =藤原公任:ふじわらのきんとう。966〜1041)
  関白太政大臣頼忠の子供で、四条大納言と呼ばれました。非常
 に博学多才で、作文・和歌・管絃をよくする「三船(さんせん)」
 の才を兼ね備えていたといわれます。「和漢朗詠集」の編者です。

■□■ 鑑賞 ■□■
  「祇園精舎の鐘の声 盛者必衰の理を表す」などと平家物語の冒
 頭にあるように、栄枯盛衰は人の世の常。人はやがて死んでいくも
 のですが、世の中には不滅のものがあります。
  滅びの美学を語る平家物語そのものが依然、我々の知るところで
 あるように、名品というものは作者の死後も、作者に代わって生き
 続けるものです。そんな名作を作るのが、はかない幻のような人生
 を生きる人間の夢でしょうか。
             ◆◇◆
  滝は枯れて、その音はもう聞こえないけれど、その名声だけは今
 だに人々の間で語り継がれているのだよ。
  この歌は滝になぞらえて、作者が文学者たる自らの思いを語った
 ものでしょうか。あまたの先人のように、人々の間で伝説となるよ
 うな名作・名歌を世に残したい。それが私の志なのだと、この歌は
 語っているようです。
  歌は技巧をこらした、というより滝に仮託して心情を表した、比
 較的ストレートなものだといえるでしょう。だからより一層、我々
 の心に響くのでしょうね。
             ◆◇◆
  さて、拾遺集の詞書には「大覚寺に人あまたまかりたりけるに、
 古き滝を詠み侍りける」とあります。
  この歌の舞台は、京都の嵐山にある大覚寺。JR山陰本線嵯峨駅か
 ら降りて北に歩くと、大沢池のほとりに現れます。この寺はかつて
 の嵯峨上皇の離宮でした。公任の時代にはすでに滝は枯れており、
 昔日をしのんで歌ったものです。しかし、この歌が有名になったこ
 とでこの枯れ滝は「名古曽(なこそ)の滝」と呼ばれるようになり
 ました。作品に描かれたことで、本当に今の時代まで伝わる滝とな
 ったわけです。この歌を詠んだ大納言公任は、1000年後インターネ
 ットを伝わって、この歌が人々に読まれることになるなど、想像で
 きなかったでしょう。
  まさに、名こそ流れてなほ聞こえけれ、というわけです。

 

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