ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年3月10日配信】[No.054]
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 【今回の歌】

  歎きつつ ひとり寝(ぬ)る夜の 明くる間は
   いかに久しき ものとかは知る

         右大将道綱母(53番) 『拾遺集』恋四・912

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  いよいよ3月。桃の花がほころびはじめ、陽射しも強くなって
 きました。ついに待ちに待った春の到来です。
  もう気の早い人は、セーターなんか着ずにシャツとブルゾンで
 外出されているかもしれません。でも、まだ寒さの呼び戻しがあ
 るでしょうから、気をつけておいてくださいね。

  さて、夜はまだ寒い3月ですが、ご主人が夜遅くまで帰って来
 ないと、なんとなく寂しいもの。夫婦生活も長くなって仕事で遅
 いのは重々承知しているけれど、もうちょっとかまってくれても
 いいようなものですね。夜遊びや浮気でもしてるんじゃないでし
 ょうね。今回は、そんな待つ夜の一首です。
  
■□■ 現代語訳 ■□■
  
  嘆きながら、一人で孤独に寝ている夜が明けるまでの時間がど
 れだけ長いかご存じでしょうか? ご存じないでしょうね。
 
■□■ ことば ■□■

 【嘆きつつ】
 「つつ」は動作や作用の反復(繰り返し)を表す接続助詞です。
 何度も嘆いてため息をつく様子を表します。
 【ひとり寝る夜】
 「寝(ぬ)る」は動詞「寝(ぬ)」の連体形です。平安時代は男
 が女性の家に通う通い婚が慣習でしたので、「ひとり寝る夜」と
 いうのは、夫の来訪がなく孤独に寝る夜のことです。
 【明くる間は】
 「夜が明けるまでの間は」という意味です。孤独な夜が長く感じ
 る、という表現は恋愛歌では常套的で、百人一首の中にもいくつ
 かあります。
 【いかに久しきものとかは知る】
 「いかに」は程度がはなはだしいことを表す副詞で、「どんなに
 か…」と問いかける言い方になっています。
 「かは」は反語を表す複合の係助詞で、連体形の動詞「知る」と
 係り結びの関係になっています。全体で「どんなに長いものか知
 っておられるでしょうか?」という意味になります。

■□■ 作者 ■□■

  右大将道綱母(うだいしょうみちつなのはは。937〜995)
 陸奥守、藤原倫寧(ふじわらのともやす)の娘。本朝三美人に選
 ばれるほどの美貌で、天暦(てんりゃく)8(954)年に藤原兼家
 の第2夫人となり藤原道綱を産みました。兼家は浮気性の人だっ
 たようで、幸せな時間は短かったようですが、その半生を綴った
 のが「蜻蛉(かげろう)日記」です。
  
■□■ 鑑賞 ■□■

  詞書によると、「入道摂政まかりたりけるに、門を遅く開けけ
 れば、立ちわづらひぬ、と言ひ入れて侍りければ」とあります。
 つまり、夫の兼家が訪れてきたのだが、わざと長く待たせて門を
 開いたら、兼家は「待たされて立ち疲れてしまったよ」と言って
 入ってきたわけです。
             ◆◇◆
  作者が書いた「蜻蛉日記」によると、話はもっとドラマチック
 になっています。息子の道綱が産まれたばかりなのに、兼家がも
 う町の小路の愛人のもとへ通いはじめたので、しばらくして明け
 方に兼家が訪れて来たので、盛りを過ぎた菊一輪と一緒にこの歌
 を渡した、とあります。
             ◆◇◆
  あなたが来ないので、嘆きながら孤独に寝ている夜。明けて朝
 になるまでの時間がどんなに長いか、あなたは知っていますか?
 ご存じではないでしょう。
             ◆◇◆
  時の摂政だった藤原兼家という人もしょうがない人ですが、浮
 気への悲しみを盛りを過ぎた菊一輪とともに歌に託して贈るとは、
 やはり平安歌人の典雅さと機知には感心してしまいますね。たと
 え蜻蛉日記が創作だとしても、菊を手渡すイメージは彼女が当時
 を代表する第一級の風流人だったことを示すものでしょう。
  ただし、平安時代の通い婚は、女性が年をとって男が通って来
 なくなれば、生活費もままならない、という切実なもの。その孤
 独は、風流などとは言えないようなものだったのかもしれません。
             ◆◇◆
  兼家と道綱母のやりとりを見ていると、なぜか帰りが遅くなっ
 たご主人と待っている奥さんの姿がイメージできるのですが、ご
 主人も奥さんに浮気の心配などかけないよう、奥さんに優しい言
 葉をかけてあげるのがいいのではないでしょうか。
             ◆◇◆
  さて、季節は3月。桃の節句が終わったばかりですので、桃の
 名所をご紹介しましょう。中央本線で東京駅から2時間と少し、
 JR石和駅で下車すると、山梨県の石和温泉郷に到着します。山梨
 県は全国一の桃の特産地で、4月中旬頃まで桃の赤い花を楽しむ
 ことができます。都心から日帰りで行ける温泉ですので、一度魂
 の洗濯に行かれるのも一興でしょう。また、赤備えの鎧と「風林
 火山」で有名な武田信玄の命日、4月12日にはJR甲府駅からバス
 で約八分の武田神社で例祭が行われます。12日の直前の土曜日に
 は「甲州軍団出陣」が行われ、戦国時代の鎧に身を包んだ1600人
 もの軍団が町を練り歩きますので、こちらにも足を伸ばされては
 いかがでしょうか。

 

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