ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年2月28日配信】[No.053]
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 【今回の歌】

  御垣守(みかきもり) 衛士(ゑじ)の焚く火の 夜は燃え
   昼は消えつつ ものをこそ思へ

         大中臣能宣(49番) 『詞花集』恋上・225

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  春間近とはいえ、まだまだ夜の長い冬の時期。
  夜に外を歩けば、家々の明かりが暖かそうですよね。
  
  平安時代の人々は、夜をどのように感じていたのでしょうか。
  たとえ宮中といえど、明かりが十分でない時代。衛士たちの燃
 やす篝火が深い闇から浮かび上がれば、幻想的な気分に誘われる
 のかもしれません。
  今回は、夜を描いたビジュアルな一首です。

■□■ 現代語訳 ■□■
  
 宮中の御門を守る御垣守(みかきもり)である衛士(えじ)の燃
 やす篝火が、夜は燃えて昼は消えているように、私の心も夜は恋
 の炎に身を焦がし、昼は消えいるように物思いにふけり、と恋情
 に悩んでいます。
 
■□■ ことば ■□■

 【御垣守(みかきもり)】
 宮中の諸門を警護する者のことです。
 【衛士(ゑじ)の焚く火の】
 「衛士(ゑじ)」は交替で諸国から招集される兵士のことで、こ
 こでは御垣守を指しています。衛門府に属して、夜は篝火を焚い
 て門を守ります。「焚く火」とは、その篝火のこと。
 「御垣守 衛士の焚く火の」までが序詞になります。
 【夜は燃え 昼は消えつつ】
 「つつ」は反復・継続を表す接続助詞です。衛士の焚く篝火が、
 夜は燃えて昼は消える、ということを対句として表現しており、
 同時に「夜は恋心に身を焦がし、昼は意気消沈して物思いにふけ
 る」という自分の心を重ねて表現しています。
 【ものをこそ思へ】
 「ものを思ふ」は、「恋をしてもの思いにふける」という意味で
 「思へ」は「思ふ」の已然形、「こそ」は係助詞で、「こそ…思
 へ」は強調の係り結びです。

■□■ 作者 ■□■

  大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ。921〜991)
 神祇大副頼基(じんぎのたいふよりもと)の息子で、百人一首に
 も歌がある伊勢大輔(いせのたいふ)の祖父。950年代に清原元輔、
 源順、紀時文(ときぶみ)、坂上望城(もちき)とともに「梨壺
 の五人」として活躍しました。「梨壺の五人」とは、宮中の撰和
 歌所で万葉集の訓読や後撰集の撰定に当たった和歌の学者たち5
 人を指す言葉。内裏後宮五舎のひとつで庭に梨の木のある「梨壺
 (昭陽舎)」に和歌所があったのでこう呼ばれました。
  
■□■ 鑑賞 ■□■

  宮中の夜、諸国から集められて各門の番「御垣守」をしている
 衛士達が、篝火をあかあかと焚いている。篝火は夜には燃え上が
 り、昼には灰になり消える。ちょうど恋する私の心が、夜には情
 念で燃え上がり、昼には意気消沈して物思いにふけるかのようだ
 なあ。
             ◆◇◆
  夜の闇を照らす篝火には独特の美しさがあるものです。平安時
 代というと、今のように街灯などはありませんから夜は深い漆黒
 の闇。そこにあかく浮かび上がる炎の動きには、人を催眠状態に
 誘うような独特の雰囲気があります。
             ◆◇◆
  この歌は、昼と夜、まるで別人だと思えるほど恋にこがれる男
 の姿を歌ったものです。しかしよく読んでみると、実は恋の心情
 は味付けのひとつで、この歌の真骨頂は「夜の闇に浮かぶ炎の美
 しさ」を描いたことにある、と言っていいでしょう。前回ご紹介
 した源重之の「風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ 砕けても
 のを 思うころかな」も同様に、海の岩に打ち当たる波飛沫を鮮
 烈に描いたものでしたが、こちらは夜と炎の美しいコントラスト
 と静謐な情景を描いた、とてもビジュアルで哲学的な雰囲気もあ
 る一首です。
             ◆◇◆
  さて、日本にはいくつか炎の美しさを味わえる「火祭り」があ
 ります。
  まず、京都・鞍馬の由岐神社の火祭り。毎年10月22日の夜6時
 から行われるお祭りで、最大で長さ数メートルもある巨大な松明
 が、鞍馬神社の下社と上社の間を行き来します。
  訪れる場合は、京阪電車出町柳駅から叡山電車に乗り換え、終
 点鞍馬駅で下車してすぐです。
  また、福岡県久留米市の大善寺玉垂宮で毎年1月7日に行われ
 る「鬼夜」は、368年より行われている非常に由緒ある火祭りで、
 半裸姿の男達が大松明をあやつります。
  訪れる場合は、JR久留米駅から、西鉄大牟田線大善寺駅で下車
 します。
  火の祭りには独特の魅力があり、一度見るとちょっと忘れがた
 いものがあります。時間を都合して見に行かれてはいかがでしょ
 うか?

 

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