ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年7月20日配信】[No.067]
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 【今回の歌】

  浅茅生(あさぢふ)の 小野(をの)の篠原(しのはら)
   しのぶれど あまりてなどか 人の恋(こひ)しき

            参議等(39番) 『後撰集』恋・578

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  梅雨も明け、暑い夏がやってきました。
 夏といえば海に山に、というのは一昔前の話で、今ではアスファ
 ルトだらけで熱帯並みの暑気を放つ外を避けて、冷房の効いた部
 屋の中でお籠もりしてデスクワーク、というのがトレンドかもし
 れません。
  しかし短い夏休みくらいは、ぱーっと羽根を伸ばしてどこかへ
 行きたーい! というのが正直な気持ち。
  テロの影響で冷え切っていた海外旅行も夏には人気復活しそう
 ですし、さてみなさんはどこへ行く?

  ところで、夏の魅力のひとつは、早朝の爽やかさでしょう。
  朝、目が覚めると庭や通りの並木の木の葉が風に吹かれて、さ
 らさらっと音を立てたり、小鳥がさえずるのを聴くと、何ともい
 えない涼を感じます。
  さて、今回は少しそんな涼も感じさせる歌を見てみましょう。
  
■□■ 現代語訳 ■□■
  
  まばらに茅(ちがや)が生える、篠竹の茂る野原の「しの」で
 はないけれども、人に隠して忍んでいても、想いがあふれてこぼ
 れそうになる。どうしてあの人のことが恋しいのだろう。
 
■□■ ことば ■□■

 【浅茅生(あさぢふ)の】
 「浅茅(あさぢ)」は、まばらに生えている茅(ちがや)のこと
 で、「生(ふ)」は「生えている場所」のことです。
 【小野の】
 「小」は接頭語で、言葉の調子を整えるために入れます。「小野」
 は「野原」のことです。
 【篠原】
  細くて背の低い竹「篠竹」の生えている原っぱのことです。こ
 こまでが序詞で「忍ぶれど…」に掛かります。
 【忍ぶれど】
 「忍(しの)ぶれ」は、上二段活用動詞「忍ぶ」の已然形で「し
 のぶ」とか「がまんする」という意味です。「ど」は逆接の接続
 助詞です。
 【あまりてなどか】
 「忍ぶ心をがまんできないで」という意味です。
 「などか」は疑問の意の副詞「など」にやはり疑問の係助詞「か」
 がついて「どうしてなのか」という意味になります。
 【人の恋しき】
 「の」は「人」が主語であることを表す格助詞で、「恋しき」は
 形容詞「恋し」の連体形です。「などか」の「か」を受けた係り
 結びになっています。

■□■ 作者 ■□■

  参議等(さんぎひとし。880〜951)
 源等(みなもとのひとし)。嵯峨(さが)天皇のひ孫で、中納言
 源希(みなもとののぞむ)の子です。近江権少掾(おうみのごん
 のしょうじょう)から左中弁、右大弁などを歴任し、947年に参議
 になりました。

■□■ 鑑賞 ■□■

  カヤ(ちがや)がところどころにまばらに生えている、篠竹が
 茂る野原。風が吹くと、竹の葉がこすれてさらさらと音を立てる。
 篠竹の「しの」ではないけれど、ひとり忍んでがまんしてきたけ
 れど、想いがあふれてしまいそう。どうしてあの人のことがこん
 なにも恋しいのだろう。
             ◆◇◆
 「後撰集」の詞書(ことばがき=歌の簡単な説明)には、「人に
 つかはしける」と書いてあります。特定の人に詠みかけた歌のよ
 うです。
 また、古今集には

 浅茅生の 小野の篠原 しのぶとも 人知るらめや 言ふ人なしに
 (心の中に思いをしのばせていても、あの人は知ってくれるだろ
  うか? いや、だめだろう。伝えてくれる人がいなければ)

 という歌があり、そこから本歌取りしたのがこの歌のようです。
             ◆◇◆
  この歌は恋の歌で、がまんし続けていてもあふれそうな恋の心
 を表現しています。
  しかしこの歌のポイントは、何といってもあふれそうな恋心を
 「浅茅生の 小野の篠原」と組み合わせた、イメージの豊かさに
 あるでしょう。
  野原一面に生えている篠竹、さらにところどころに茅(ちがや)
 が生えている情景。風が吹くと、衣擦れのようにさらさらと一面
 波打つように篠竹がゆれて音をたてそうです。
  そういう美しいイメージをバックに、秘めた恋のことが歌われ
 ています。恋はやはりロマンチックさがないと興味も半減しそう
 ですが、こういう美しさを秘めた恋に読み込めば、相手の女性も
 陶酔してしまうのではないでしょうか。
  序詞は、一見ただの言葉遊びのようにも思えますが、こういう
 美しい情景を読み込むことで、後の句に彩りを添える効果もあり
 ます。
  平安時代の典雅さにちょっと酔いしれそうですね。
             ◆◇◆
  さて、このメールマガジンでは、歌にまつわる名所や旧跡を紹
 介していますが、今回はちょっと趣向を変えてみましょう。
  東京都世田谷区用賀、東急田園都市線用賀駅から砧公園にいた
 る通りは、1986年に完成し、「用賀プロムナード」と呼ばれてい
 ます。この道は瓦を敷きつめ、並木や石像などのモニュメントが
 いっぱいある楽しい小道ですが、地面を見るとなんと百人一首が
 道の両端に彫り込まれているのです。
  通りの先の砧公園は、緑の芝生と森のある美しい公園です。
 タイルが美しい世田谷美術館が公園内にあり、世田谷ゆかりの芸
 術家やアンリ・ルソーなどの絵画が数多く収められています。
  天気のいい日曜日、一度お子様連れで遊びに行かれてはいかが
 でしょうか。

 

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