ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2001年10月20日配信】[No.040]
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 【今回の歌】

   心あてに 折らばや折らむ 初霜の
    おきまどはせる 白菊の花 

         凡河内躬恒(29番) 『古今集』秋下・277

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  秋も深まれば、寒さがぐっと厳しくなります。特に朝の冷え込
 みはかなりのもので、風邪をひく人も多いことでしょう。皆さん
 お気をつけください。
  もうすぐ、朝には霜が降りはじめます。その年はじめての霜を
 「初霜」といい、関東では10月20日くらい、関西では11月10日く
 らいに降ります。鈍く輝く初霜は美しいものですが、その霜にま
 ぎれた白菊もまた清楚な美しさを見せることでしょう。今回ご紹
 介するのは、そんな一首です。

■□■ 現代語訳 ■□■
  
  もし手折(たお)るならば、あてずっぽうに折ってみようか。
 真っ白な初霜が降りて見分けがつかなくなっているのだから、
 白菊の花と。
 
■□■ ことば ■□■

 【心あてに】
 「あて推量に」「あてずっぽうに」などの意味です。
 【折らばや折らむ】
 「折らば」は四段活用動詞「折る」の未然形に接続助詞「ば」が
 ついたもので仮定条件を表します。「や」は疑問の係助詞です。
 「む」は意志の助動詞で上の「や」と係り結びになっています。
 全体では「もしも折るというなら折ってみようか」という意味で
 す。
 【初霜】
 その年はじめて降りる霜のことです。晩秋に降ります。
 【置きまどはせる】
 「置く」は、「(霜が)降りる」という意味です。「まどはす」
 は、「まぎらわしくする」という意味で、白菊の上に白い霜が降
 りて、白菊と見分けにくくなっている、という意味を表します。
 【白菊の花】
 上の句の「折らばや」に続く、倒置法になっています。
 
■□■ 作者 ■□■

  凡河内躬恒(おおしこうちのみつね。生没年不明)
 9〜10世紀初頭にかけて生きた人で、下級役人であり、甲斐少目
 (かいしょうさかん)、和泉大掾(いずみのだいじょう)、淡路
 権掾(あわじごんのじょう)などの職につきました。しかし歌才
 に優れ、紀貫之と並ぶ当時の代表的歌人として宮廷の宴に呼ばれ
 たり、高官の家に招かれたりしています。三十六歌仙の一人で、
 古今集の撰者です。当時から「詠み口深く思入りたる方は、又類
 なき者なり」と非常に高く評価されていました。
 
■□■ 鑑賞 ■□■

  今朝は特別肌寒い。空気が刺すように冷たく、吐く息が白く濁
 る。手のひらに息を吹きかけてこすりながら縁側へ出てみると、
 庭の可憐な白菊の上に鈍くも白い初霜が降りている。
  寒いわけだ、初霜とは。初霜も白いので、白菊の花を折ろうと
 思っても、どれが白菊だか分からない。あてずっぽうに折るしか
 ないだろうな、初霜でまぎらわしくなっているから。白菊の花が。
             ◆◇◆
  霜の降る朝の凛とした寒気、そして白菊の可憐な白さと誰も手
 を触れていない初霜の清楚な白さが合わされて、非常に高潔な美
 が描写されている一首です。「初」というのは清らかさがイメー
 ジされる表現ですが、そこにきりっと体が引き締まるような冷気
 を加えて、この歌の格調を醸し出しているようです。
  倒置法にしたことで、最後に持ってきた「白菊の花」に焦点が
 絞られるように組み立てられてもいます。
  派手な言葉遊びや序詞は使っていないものの、さりげなく上手
 い、名人の手になる一首でしょう。さすが下級役人ながら古今集
 の撰者となり、紀貫之のライバルと目された作者の面目躍如とい
 うところでしょう。
             ◆◇◆
  実はこの歌は、明治時代の大俳人・正岡子規が「五たび歌よみ
 に与ふる書」の中で、「初霜が降りたくらいで白菊が見えなくな
 るわけではない。これは嘘の趣向である」と酷評しています。
  今読むと、子規の批判の仕方は風流を解しないなあ、ちょっと
 真面目すぎるんじゃないか、とも思われますね。
  特に凡河内躬恒は知的で深い思索的な歌を得意とする歌人です
 ので、この評価はちょっといただけない感じがします。
  ただし、子規は「恋に悲しめば、誰も一晩中袖が濡れ続けるほ
 ど泣いているのか」などといった、王朝風のすでに使い古されて
 陳腐になってしまった大げさな表現を今だに大事にしている歌の
 世界に疑問を感じて、「写生」つまりリアリティの大切さを説き
 たかったわけです。今では子規をはじめとする先人の活躍で、歌
 の世界も構造改革がなされましたので、百人一首などの古い名歌
 もまた、楽しめる余裕が出てきています。
             ◆◇◆
  さて、秋の花の代表である菊が出ましたので、菊で有名な観光
 地を紹介してみましょうか。菊というと、まず思い浮かぶのは大
 阪・枚方市の枚方パークの大菊人形展です。大阪の地下鉄御堂筋
 線・淀屋橋駅から京阪電車に乗り換え、枚方公園駅で下車。園内
 には約10万株の菊が咲き誇ります。
  東北では秋田・横手公園の菊などが有名。JR横手駅から保養セ
 ンター行バスに乗り、横手公園入口で下車して5分の距離にあり
 ます。横手城跡の見学かたがた行かれるとよいでしょう。
  東京では、新宿御苑で菊が見られます。地下鉄丸の内線新宿御
 苑前で下車します。
  中国地方では、広島県福山市の精興園が有名です。菊の育種と
 品種改良を専門に行っている企業の庭園で、数千種の菊がありま
 す。JR福山駅から福塩線に乗り換え、新市駅で下車し、タクシー
 で約10分の距離にあります。

 

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