ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年4月20日配信】[No.058]
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 【今回の歌】

  みかの原 わきて流るる 泉川(いづみがは)
   いつ見きとてか 恋(こひ)しかるらむ
          中納言兼輔(27番) 『新古今集』恋・996

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  ついこの間まで「今年の桜は早咲きだ」なんて言っていたのに
 気がついたらもうゴールデン・ウィークの話題が出るようになっ
 てきました。
  今年のゴールデンウィークは前半と後半にきっちり分かれそう
 な感じですが、中には10連休にする人もいるんでしょうか。とに
 かく春の大型連休、たっぷり満喫したいものですね。
  
  春のレジャーといえば、泉の湧き出るような高原へハイキング
 に行くのもまた楽しいもの。だから今回は、泉に関わる歌を取り
 上げてみました。
  
■□■ 現代語訳 ■□■
  
  みかの原から湧き出て、原を二分するようにして流れる泉川で
 はないが、いったいいつ逢ったといって、こんなに恋しいのだろ
 うか。(一度も逢ったことがないのに)
 
■□■ ことば ■□■

 【みかの原】
 「瓶原(みかのはら)」と書き、山城国(現在の京都府)の南部
 にある相楽(そうらく)郡加茂町(かもちょう)を流れる木津川
 の北側の一部を指します。聖武天皇の時代に、しばらく恭仁京(
 くにきょう)が置かれました。
 【わきて流るる】
 「わき」は四段動詞「分く」の連用形で「分けて」という意味で
 すが、「分き」と「湧き」(水が湧く)を掛けています。「湧き」
 は「泉」の縁語でもあります。全体で「分けて流れる」と「湧き
 出て流れる」という意味です。
 【泉川】
 現在の木津川のこと。ここまでが序詞です。
 【いつ見きとてか】
 「き」は過去の助動詞、「か」は疑問の係助詞です。「いつ逢っ
 たというのか」という意味です。
 【恋しかるらむ】
 「恋しかる」は形容詞「恋し」の連体形で、「らむ」は推量の助
 動詞です。「恋しいのだろうか」という意味になります。

■□■ 作者 ■□■

 中納言兼輔(ちゅうなごんかねすけ。877〜933)
 藤原兼輔(ふじわらのかねすけ)。紫式部の曾祖父で、三十六歌
 仙の一人です。従三位、中納言兼右衛門督(うえもんのかみ)ま
 で昇進しました。屋敷が賀茂川堤にあり、「堤中納言」と呼ばれ
 て紀貫之らの大歌人たちがよく屋敷に出入りしていました。10世
 紀頃の中心的な歌人です。
 
  
■□■ 鑑賞 ■□■

  みかの原を2つに分けて、湧き出て流れる泉川のように、いっ
 たいいつあの人を見たといってこんなにも恋しいのだろうか。
             ◆◇◆
  泉川までが掛詞で、「分ける」と「湧ける」を掛け、泉(いず
 み)と「いつみ」を掛ける。さらに「わき」は「泉」の縁語。
 と、これだけ見ればテクニックをふんだんに使った普通の恋の歌
 のようなのですが、この歌には下の句がちょっと現代の常識とは
 かけ離れています。
  下の句は実はいくつかの解釈があって、「噂は聞いているが、
 一度も逢ったことのない女性への恋」や「一度は逢ったが、それ
 がとても信じられないような女性への恋」というものです。
 今ではどうも「一度も逢ったことがない女性への恋」説が有力だ
 と言われています。
  言うなれば、アイドル女優に憧れる男子学生の心持ちを綴った
 歌だというわけでしょうか。
  それにしても「一度も逢ったことがない」とは…。少しうぶ過
 ぎるかなあ、と思えるのですが、平安時代の恋心ですし。
             ◆◇◆
  まあ、多少の驚きはありますが、「恋に恋する」というか「若
 き憧れ」の感情をこの歌は上手く表現しています。
  まだ見ぬ人を恋するという清純な心を、「みかの原に湧きだし
 て流れていく清らかな泉川」に託しています。単なる言葉遊びで
 はなく、ここでこの序詞は、風評でしか知らない絶世の美女に恋
 する若き少年の実感を描くことに成功しています。
             ◆◇◆
  さて、この歌の舞台「瓶原(みかのはら)」は、京都府の南部、
 奈良県との境に近い木津川の流域で、京都府相楽郡加茂町にあた
 ります。この辺りには8世紀に恭仁京が置かれ、栄えました。
  現在では、恭仁小学校の北に大極殿の礎石跡が残っています。
  また加茂町には、恭仁京で鋳造されたという日本最古の貨幣、
 「和同開珎(わどうかいちん)」の鋳造所も発掘されています。
 さらに、国宝の三重塔や阿弥陀堂がある浄瑠璃寺(じょうるりじ)
 などもありますので、散策には適しているかもしれません。
  訪れる場合は、JR関西本線・加茂駅で下車します。

 

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