ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2001年9月20日配信】[No.037]
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 【今回の歌】

   吹くからに 秋の草木(くさき)の しをるれば 
    むべ山風を 嵐といふらむ

          文屋康秀(22番) 『古今集』秋下・249

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  秋が深まる頃になると、秋風が渺々(びょうびょう)と吹きは
 じめるようになります。
  山沿いの土地では、斜面から降りてくる山風。まるで嵐のよう
 に激しく吹き荒れ、冬の到来を予感させますね。
  昔は夜になると、縁側の戸板ごしに大風が吹き荒れている様が
 聞こえてきたものです。見えないとその凄さはよりいっそう激し
 く感じられるのでした。
  今回紹介する一首は、そんな秋の嵐を詠んだ名句です。

■□■ 現代語訳 ■□■
  
  山から秋風が吹くと、たちまち秋の草木がしおれはじめる。
 なるほど、だから山風のことを「嵐(荒らし)」と言うのだなあ。
 
■□■ ことば ■□■

 【吹くからに】
 「吹くとすぐに」という意味です。「からに」は複合の接続助詞
 で、「〜するとすぐに」という意味を表します。
 【しをるれば】
 「しをる」は草木が色あせてしおれる意味の動詞で、その已然形
 に原因・理由を表す接続助詞「ば」が付いています。
 【むべ】
 「なるほど」と言う意味の副詞。上の句で示された根拠を踏まえ
 「なるほど、だから山風を嵐と言うのか」と理由を推理して納得
 しています。
 【山風】
 山から降りてくる強い風で、晩秋に吹き、冬を予感させます。
 【嵐といふらむ】
 「らむ」は推量の助動詞で、「嵐と言うのだろう」という意味に
 なります。「嵐」は「荒らし」との掛詞で、秋の草木を荒らして
 枯れさせるので「アラシ」と言うのだろうなあ、という意味があ
 ります。また「山」と「風」の漢字2文字を合わせれば「嵐」に
 なるという遊びも盛り込まれています。
 
■□■ 作者 ■□■

  文屋康秀(ふんやのやすひで。生没年不明)
 9世紀頃の平安初期の歌人で、別称・文琳(ぶんりん)。形部中
 判事、三河掾(みかわのじょう)、縫殿助(ぬいどののすけ)な
 ど官職は低かったのですが、六歌仙の一人で歌人としては有名で
 した。三河掾になって三河国(現在の愛知県東部)に下るときに
 小野小町を任地へ誘った話が有名です。
 
■□■ 鑑賞 ■□■

  漢字の「山」と「風」を組み合わせると「嵐」になりますね。
  この歌はそうした漢字遊びを取り入れながら、山を転がり落ち
 てくる晩秋の激しい風の様子を詠んだ歌でもあります。
  「古今集」の詞書には「是貞(これさだ)の親王(みこ)の家
 の歌合の歌」とあります。漢字遊びを取り入れたところが、歌会
 にふさわしくトリッキーな感じで、康秀の機知に皆はさぞかし感
 心したことでしょう。
             ◆◇◆
  山から秋風が吹き降りてくれば、とたんに次々と草木が枯れ萎
 えてしまう。なるほど、だから山風のことを草木を荒らす「荒ら
 し」「嵐」と言うのか。
  秋の夜に吹き荒れる激しい風の音を聞き、茶色く枯れしおれて
 いく野の草に、冬の到来を感じながら、康秀はこの「嵐」の歌を
 詠んだのでしょうか。機知や言葉遊びというと軽い感じがします
 が、この歌にはどこか荒涼とした嵐に、激しいイメージが喚起さ
 れます。
             ◆◇◆
  ところで文屋康秀という人は、小野小町の恋人の一人だったよ
 うで、三河掾に任命されて三河国に向かう時、小野小町に「一緒
 に来てくれないか」と誘ったそうです。
 それに対して小町は、
  わびぬれば 身を浮草の 根を絶えて 
  誘う水あらば いなむとぞ思ふ
 (落ちぶれていますので、この身を浮き草として根を断ち切って誘
 い流してくれる水があるなら、ついて行こうと思います)
 と答えています。はたして、小野小町はついていったのでしょうか。
             ◆◇◆
  康秀の赴任した三河国、といっても広いですが、中でも岡崎市は
 徳川家康の出身地として有名です。中でも岡崎城のある岡崎公園は
 一番の見所。家康の住んだ岡崎城の他、三河武士の絵図や文献など
 が見られる「三河武士のやかた家康館」、龍城神社、二の丸能楽堂
 などを見物することができます。桜の名所としても知られています。
  訪れる場合は、名鉄名古屋本線に乗り、東岡崎駅で下車して徒歩
 15分の距離にあります。

 

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