ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

『ちょっと差がつく百人一首講座』バックナンバー一覧へ

【2001年1月20日配信】[No.013]
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 【今回の歌】

   たち別れ いなばの山の 峰に生ふる
     まつとし聞かば 今帰り来む

        中納言行平(16番) 『古今集』離別・365

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

  たとえば、飼っていた猫が行方不明になった時、おばあさんな
 どが、この歌を短冊に書いて、猫の皿を伏せてその下に置いてお
 くのを見たことがありませんか?
  この歌は、別れを惜しむ歌ですが、一方でいなくなった人や動
 物が戻ってくるように願う、おまじないの歌でもあります。
 
■□■ 現代語訳 ■□■
  お別れして、因幡の国へ行く私ですが、因幡の稲羽山の峰に生
 えている松の木のように、私の帰りを待つと聞いたなら、すぐに
 戻ってまいりましょう。
 
■□■ ことば ■□■
 【たち別れ】
 「たち」は接頭語。行平は855年に因幡(いなば)国(現在の鳥取
 県)の守となりました。その赴任のための別れを表しています。
 【いなばの山】
 因幡の国庁近くにある稲羽山のこと。「往なば(行ってしまったな
 らの意味)」と掛詞になっています。
 【生(お)ふる】
 動詞「生ふ」の連体形。生える、という意味です。
 【まつとし聞かば】
 「まつ」は「松」と「待つ」の掛詞。「し」は強調の副助詞、「聞
 かば」は仮定を表します。全体では「待っていると聞いたならば」
 の意味となります。
 【今帰り来む】
 「今」は「すぐに」を意味しており、「む」は意志の助動詞。「す
 ぐに帰ってくるよ」という意味です。
  
■□■ 作者 ■□■
  在原行平(ありわらのゆきひら。818〜893)
 平城(へいぜい)天皇の皇子・阿保(あぼ)親王の子で、業平の異
 母兄にあたります。文徳天皇の御代の850年ごろ、過失をおかして
 一時期須磨に流されたことがありました。

■□■ 鑑賞 ■□■
  855年の春、行平が因幡守に任ぜられ、赴任地へ向かうときに、
 送別の宴で詠んだ挨拶の歌です。
  お別れですが、因幡国・稲羽の山に生える松のように「待ってい
 るよ」と言われたならば、すぐにでも帰ってきましょうぞ。
  都から遠く離れた地方都市へ赴任する自分の身を思い、都への断
 ちがたい思慕を詠んだせつない歌です。別れの名句といえるでしょ
 う。
             ◆◇◆
  冒頭で紹介したように、この歌は「別れた人や動物が戻って来る
 ように」と願掛けをするときに使われる有名な歌です。
  ユーモアエッセイの名手、内田百間(門に月の字)の本に「ノラ
 や」という連作エッセイがあります。その中でいなくなった愛猫、
 ノラが戻って来るように、このおまじないをするシーンがあります。

  この歌の切なさが、いなくなった動物へ寄せる思いに通じ、こう
 したおまじないが生まれたのでしょう。
  もし飼い猫がいなくなった時には、試してみてください。
             ◆◇◆
  この歌の舞台となった因幡の国庁は、現在の鳥取県岩美郡国府町
 にあります。行くときは山陰本線の鳥取駅で下車し、中河原・栃本
 方面行きのバスに乗り、宮ノ下で降ります。
  宮ノ下バス停からは、稲葉山(標高249m)まで続く4.8kmの登山
 コースがあり、武内宿弥命(たけのうちのすくねのみこと)を祭神
 とする「宇倍神社」や、宮下古墳群を通り、最後に在原行平の塚に
 到達します。稲葉山は国守・大伴家持も歌に詠んだ名勝で、新緑や
 紅葉時の自然散策を楽しめます。
  付近には大伴家持ゆかりの古跡と歌を記念した、「稲葉万葉歴史
 館」もありますので、一度訪れられてはいかがでしょうか。

 

『ちょっと差がつく百人一首講座』バックナンバー一覧へ


せんべい,煎餅,おかき,あられ,おせんべい【長岡京小倉山荘】
京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】TOPへ