ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年3月30日配信】[No.056]
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 【今回の歌】

  君がため 春の野に出でて 若菜摘む
   我が衣手に 雪は降りつつ 

             光孝天皇(15番) 『古今集』春・21

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  今年は本当に早くから暖かくて、桜も本当に早く咲きましたね。
 あちこちで開花日が観測史上最速だったようです。
  早く咲いたら早く散るというのが習いです。「こりゃあタイミ
 ングを逃したらいけない」なんて考える人も当然いるでしょうか
 ら、ひょっとしたら、もうお花見は終わったなんて会社もあるか
 もしれません。
  もう皆さんはお花見には行かれましたか?
  
  さて、春咲く花は桜ばかりではありません。タンポポやシロツ
 メクサ、レンゲなど春になるとさまざまな花が野山に咲き競い、
 草も燃えるような緑葉を茂らせます。それを見るのがまた楽しみ
 でもありますよね。
  子供の頃は女の子たちが、シロツメクサで花の冠(クリスマス
 リースのようなものです)をよく作っていたのを覚えていますが
 自然が身近になくなった最近ではどうでしょうか。
  今回は、春の野原で摘む野草の歌を取り上げてみましょう。
  
■□■ 現代語訳 ■□■
  
  あなたにさしあげるため、春の野原に出かけて若菜を摘んでい
 る私の着物の袖に、雪がしきりに降りかかってくる。
 
■□■ ことば ■□■

 【君がため】
 「君」は、この場合は若菜を贈る相手を指します。
 【若菜摘む】
 「若菜」は決まった植物の名前ではなく、春に生えてきた食用や
 薬用になる草のことです。「春の七草」のセリ、ナズナ、ゴギョ
 ウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ(カブ)、スズシロ(ダイコ
 ン)などが代表的です。昔から、新春に若菜を食べると邪気を払
 って病気が退散すると考えられており、1月7日に「七草粥」を
 食べるのはそこから来ています。初春の「若菜摘み」も慣例的な
 行事でした。
 【わが衣手に】
 「衣手(ころもで)」は袖の歌語です。
 【雪は降りつつ】
 「つつ」は動作の反復・継続を表す接続助詞で、「し続ける」と
 いう意味です。「つつ」は百人一首の撰者・藤原定家の好きな表
 現でもあり、定家の歌も「つつ」で終わっています。

■□■ 作者 ■□■

  光孝天皇(こうこうてんのう。830〜887)
 仁明(にんみょう)天皇の第3皇子で、即位前は時康(ときやす)
 親王でした。陽成(ようぜい)天皇の後、藤原基経(もとつね)
 に擁立されて即位しましたが、政治判断はすべて基経にまかせて
 いました。関白のはじまりです。
  
■□■ 鑑賞 ■□■

  あなたのために、まだ寒さの残る春の野原に出かけて、食べる
 と長生きできるという春の野草を摘みました。摘んでいると、服
 の袖にしんしんと雪が降りかかってきましたよ。
             ◆◇◆
  古今集の詞書には「仁和(にんな)の帝(みかど)、皇子(み
 こ)におはしましける時、人に若菜たまひける御歌」と書かれて
 います。
  光孝天皇がまだ時康親王だった若い頃、男性か女性か誰かは分
 からないけれど、大切な人の長寿を願って春の野草を贈った時に
 それに添えた歌、という意味です。
             ◆◇◆
  とても細やかな心遣いを描いた歌で、「春の野」「若菜」「衣
 手」「雪」と柔らかなイメージを含んだ言葉が並んでおり、とて
 も優美な歌です。野原や若菜の緑と、雪の白の対比も綺麗ですし
 とても清らかな感じが全体から漂ってきます。
  汚れを知らない純粋培養されたような心がそこには見えます。
 光孝天皇は即位後、藤原基経に政治をまかせていたそうで、それ
 もむべなるかな、でしょうか。腹黒さの必要な政治の世界は、こ
 の歌の作者向きではなかったようです。
             ◆◇◆
  若菜は、春の七草のように食べられたり薬にする野草の総称で
 新春にそれを食べると長生きする、と信じられてきました。正月
 7日の「七草粥」の行事もそこからきています。
  ただし、実際には春先に生えるセリやヨメナを指すことが多い
 ようですので、3月末の今、スーパーに並ぶセリなどを買ってみ
 て、お吸い物などにして食べても長寿に良いかもしれません。
             ◆◇◆
  さて、光孝天皇が若菜を摘んだ場所というのは、京都市の右京
 区嵯峨にあった「芹川」の周辺に広がっていた芹川野だったそう
 です。そこに御幸を行い、鷹狩りをして和歌を詠んだそうです。
  ただし、実際に春の若菜やツツジの名所というと、大和国添上
 郡(現在の奈良市)の春日野です。奈良公園がそれで、JR奈良
 駅からバスに乗って向かいましょう。春の奈良公園は、桜をはじ
 めさまざまな草花の緑が萌えており、とてもリラックスできるは
 ずです。長寿にはもってこいの景色でしょう。

 

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