ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年4月30日配信】[No.059]
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 【今回の歌】

  筑波嶺(つくばね)の 峰より落つる 男女川(みなのがは)
   恋(こひ)ぞつもりて 淵(ふち)となりぬる

             陽成院(13番) 『後撰集』恋・777

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  ゴールデンウィークも前半が終わりました。中には、この際だ
 から11連休にしちゃった、っていう羨ましい人もいるかもしれま
 せん。一方、自営業の方の中には「この時期にお客さんがいっぱ
 い来てくれないと困る。休んでいる暇なんてないや」と思ってい
 る方もいらっしゃることでしょう。
  みなさんのGW計画は順調ですか?
  
  ともあれ、GWの一番の楽しみは旅行です。普段はどこにも連
 れていってくれないお父さん、ディズニーランドをはじめ、観光
 地はどこも行楽客でいっぱいでしょうけど、ひとつ家族サービス
 といきませんか。今回は、風景描写の美しい一首を選びました。
  
■□■ 現代語訳 ■□■
  
  筑波のいただきから流れ落ちてくる男女川(みなのがわ)が、
 最初は細々とした流れから次第に水かさを増して深い淵となるよ
 うに、恋心も次第につのって今では淵のように深くなっている。
 
■□■ ことば ■□■

 【筑波嶺(つくばね)の】
 「筑波」は常陸国(現在の茨城県)の筑波山のことです。山頂が
 男体山と女体山の2つに分かれ、万葉の昔からよく歌に詠まれま
 した。古代には、春と秋に男女が集まって神を祀り、求愛の歌を
 歌いながら自由な性行為を楽しむ「歌垣」として知られていまし
 た。
 また「つくばね」の「つく」は相手側に「付く」という意味を表
 します。
 【峰より落つる】
 「山頂から(の水の流れが)落ちていく」という意味です。「嶺」
 「峰」と繰り返すことで山の高峻さがクローズアップされています。
 【男女川(みなのがは)】
 「水無乃川」とも書きます。男体山、女体山の峰から流れ出る川
 なのでこう呼ばれます。川は筑波山の麓を流れて桜川に合流し、
 霞ヶ浦に流れ込みます。ここまでが序詞になります。
 【恋ぞつもりて】
 「恋情がだんだんつのって」という意味で、細かった川の流れが
 峰から里に下るにつれて太く強い流れになっているイメージと重
 ね合わせています。
 【淵となりぬる】
 「淵」は流れがたまって深くなっている場所です。恋の気持ちと
 川の流れを重ね合わせ、恋心がつのっていく様子を表現していま
 す。「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形です。後撰集では
 「なりける」となっていますが、「ぬる」の方が思い詰めた感覚
 が強く表れているようです。

■□■ 作者 ■□■

 陽成院(ようぜいいん。869〜949)
 清和天皇の皇子で、第57代天皇に10歳で即位しましたが、病のた
 め17歳で譲位しました。勅撰集にはこの歌のみが残されています。
  
■□■ 鑑賞 ■□■

  最初はほのかだった恋心だけれど、時間がたつにつれてゆ?
 りと深くなっていく。まるで筑波山のいただきから滔々と流れ落
 ちる男女川がだんだん太い流れになり、麓で深い深い淵になるよ
 うに、私の恋心はこんなにも大きく強くなったのだ。
             ◆◇◆
  後撰集の詞書には「釣殿(つりどの)の皇女(みこ)につかわ
 しける」と書かれています。釣殿の皇女とは光孝天皇の娘、綏子
 (すいし)内親王を指しており、後に陽成院のお后となります。
             ◆◇◆
  どうでしょうか。具体的な相手がいたラブレターだったわけで
 す。最初は淡い恋心だったのだけど、どんどんあなたのことを想
 いつのり、深く愛するようになりました、という意味が筑波山の
 川に込められて語られます。
  これが平安の恋のワン・エピソードだと思うと、なかなかロマ
 ンがあります。清純な若き恋心の発露でしょうか。陽成院は脳を
 病んでいたと伝えられ、しばしば宮中で狂態を演じたとも伝えら
 れます。しかし、この歌はそうした背景は別として、現代にも通
 じる愛の誠実さが感じられます。
             ◆◇◆
  当時の宮中においては、筑波山は現代と違って、文化の届いて
 いない東国にある、というイメージがありました。野蛮で素朴と
 いった印象の土地だったのです。当然作者もそこへは行ったこと
 がなく、伝聞や絵図でのみイメージをふくらませたのでしょうが、
 それが素朴で清楚といったこの歌の印象ととてもよく合っている
 ような心持ちがします。
             ◆◇◆
  この歌の舞台になった筑波山は、茨城県つくば市にある有名な
 山です。山は2つに分かれており、西の男体山が871m、東の女体
 山が877mと低いですが、「西の富士山、東の筑波」と称されるほ
 ど古くからその優美な姿を愛されており、しかも朝は藍色、夕刻
 には紫に色をさまざまに変えるため「紫峰」とも呼ばれます。
  周囲は水郷・筑波国定公園に指定される美しい自然景観が楽し
 める場所で、山腹には梅林や北条大池、桜並木やカブトムシなど
 がたくさん生息するクヌギの大きな林などがあります。
  また、国の重要文化財で、縁結び・夫婦和合の神で有名な筑波
 山神社もあり、夏の8月にはガマの油売りの口上が楽しめるガマ
 祭なども開催されます。
  訪れる場合は、東京・上野駅からJR常磐線土浦駅まで行き、
 筑波鉄道に乗り換えれば筑波駅に到着します。男体山、女体山と
 もケーブルカーやロープウェイで山頂まで行けますので、ハイキ
 ングで訪れてみましょう。

 

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