ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2002年3月20日配信】[No.055]
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 【今回の歌】

  花の色は うつりにけりな いたづらに
   わが身世にふる ながめせしまに

             小野小町(9番) 『古今集』春・113

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  今年は暖冬のせいで、桜の開花日が記録的に早いんだそうです。
 平年並みの昨年なら、大阪・京都・東京で3月30日くらいだった
 んですが、今年は大阪・京都で3月21日くらい、東京で20日くら
 いと平均より1週間以上早くなっています。
  毎年、お花見へ行かれる方も通りの桜を眺めて楽しまれる方も
 ちょっと気に留めておいてください。まごまごしていると、タイ
 ミングを失ってしまいますよ。
  というわけで今回は、はかなくも散る桜の花に自分の衰えた美
 貌を重ねた「タイミング」の一首です。
  
■□■ 現代語訳 ■□■
  
  桜の花の色は、むなしく衰え色あせてしまった、春の長雨が降
 っている間に。ちょうど私の美貌が衰えたように、恋や世間のも
 ろもろのことに思い悩んでいるうちに。
 
■□■ ことば ■□■

 【花の色】
 「花」とだけ書かれている場合、古典では「桜」を意味します。
 「桜の花の色」という意味ですが、ここでは「女性の若さ・美し
 さ」も暗示しています。
 【うつりにけりな】
 動詞「うつる」は花の色のことなので、「色あせる・衰える」と
 いうような意味です。「な」は感動の助動詞で、「色あせ衰えて
 しまったなあ」という意味になります。
 【いたづらに】
 「むだに」や「むなしく」という意味で形容動詞「いたづらなり」
 の連用形です。
 【世にふる】
 ここでの「世」は「世代」という意味と「男女の仲」という2重
 の意味が掛けてある掛詞です。さらに「ふる」も「降る(雨が降
 る)」と「経る(経過する)」が掛けてあり、「ずっと降り続く
 雨」と「年をとっていく私」の2重の意味が含まれています。
 【ながめせしまに】
 「眺め」は「物思い」という意味と「長雨」の掛詞で、「物思い
 にふけっている間に」と「長雨がしている間に」という2重の意
 味があります。さらに「ながめせしまに → 我が身世にふる」
 と上に続く倒置法になっています。

■□■ 作者 ■□■

  小野小町(おののこまち。生没年未詳、9世紀ごろ)
 伝説の美女で、六歌仙、三十六歌仙の一人。平安初期の女流歌人
 としてナンバーワンとされる人です。小野篁(おののたかむら)
 の孫であるとか諸説がありますが、正確な経歴は分かっていませ
 ん。この歌をタネにして「卒塔婆小町」や「通小町」など、「若
 い頃は絶世の美女と謳われたが、老いさらばえて落ちぶれた人生
 のはかなさ」を表現した謡曲や伝説が多数書かれています。土地
 の美人のことを「××小町」などと言うのも小町伝説の影響です。
  
■□■ 鑑賞 ■□■

  栄え咲き誇った桜の花も、むなしく色あせてしまったわね。私
 が降り続く長雨でぼんやり時間をつぶしているうちに。
  かつては絶世の美女よ花よと謳われた私も、みっともなく老け
 こんでしまったものね。恋だの愛だの、他人との関わりのような
 ことに気をとられてぼんやりしているうちに。
             ◆◇◆
  非常によく知られている歌で、色あせた桜に老いた自分の姿を
 重ねた歌です。かつて日本の美女を「小町」と言ったように、伝
 説の美女ですが、それは年をとるにつれて衰えゆく「無常な時間
 に敗れゆく美」を歌い上げたからかもしれません。
  ただ単に美しいだけなら、誰の心にも残りませんものね。
             ◆◇◆
  古今集の撰者だった紀貫之は、その「仮名序(かなで書かれた
 序文)」で、小野小町の歌を評して「あはれなるようにて強から
 ず。いはばよき女の悩める所あるに似たり」と書いています。
  「内省的な美女のような歌だ」といったところでしょうか。
  百人一首と新古今集の撰者、藤原定家は、この歌を「幽玄様」
 の歌としています。幽玄とは、言葉で表している意味を越えて感
 じられる情緒、イメージの広がり、というようなことで、定家の
 父親の俊成は「和歌の最高の理念」としています。
  この歌のもつ滅びの美学、「無常観」といったものが日本的な
 美学の追求にぴったり合ったのでしょうね。
             ◆◇◆
  ただ、こんなに難しく考えなくても、「若かった頃は、私(僕)
 も綺麗だって言われてちやほやされてたなあ。いつの間に年とっ
 ちゃったんだろ」なんて誰もが考えますよね。
  能などでは、老いさらばえて死んで荒れ野でドクロとなった小
 野小町が、現世に未練を残した幽霊として登場したりします。
  それほどこの歌が与えた影響は大きいのですが、要するに誰も
 が心に思っている「若かった頃にやり残したことへの悔い」をこ
 の歌が表現しているからかもしれませんね。
  年をとってくると時間の過ぎゆくのが早いですからね。若い人
 も相応の方も、遅いなんてことはないですから、今からでもやり
 残したことをはじめてみましょうよ、ね。
             ◆◇◆
  さて、数々の伝説を残した小野小町ですが、その墓は京都市左
 京区静市市原町の「補陀落寺(ふだらくじ)」、通称「小町寺」
 にあります。京阪電鉄の終点、出町柳駅から叡山鉄道に乗り換え、
 市原駅で下車すればすぐです。
  境内には、小町の墓の他、姿見の井戸など故事にまつわるもの
 がいろいろあるようです。また、小町の邸宅があったとされる山
 科の随心院には、小町の文塚などがあります。3月の最終日曜日
 には小町に扮した少女が踊る「はねず踊り」が行われるようです。
  こちらは京都市の地下鉄東西線小野駅から東へ歩いて5分の距
 離にあります。付近には小町ゆかりの史跡が数多く残されていま
 す。

 

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