ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2001年11月20日配信】[No.043]
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 【今回の歌】

   奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の
    声きく時ぞ 秋は悲しき

           猿丸太夫(5番) 『古今集』秋上・215

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  晩秋はメランコリーの季節。冬へ向かって暮れゆく時期ですの
 で、寒さが心にも微妙な変化を与えるのかもしれません。
  とにかく、遠距離恋愛や単身赴任などで恋しい人と離ればなれ
 になっている人には、秋の山で連れを想って鳴くこの鹿の気持ち
 がよくお分かりになるかも。
  今回はメランコリーの一首です。

■□■ 現代語訳 ■□■
  
  人里離れた奥山で、散り敷かれた紅葉を踏み分けながら、雌鹿
 が恋しいと鳴いている雄の鹿の声を聞くときこそ、いよいよ秋は
 悲しいものだと感じられる。
 
■□■ ことば ■□■

 【奥山】
 人里離れた奥深い山のことです。
 【紅葉踏みわけ】
 散った紅葉が地面いっぱいに敷きつめられたところを、雄の鹿が
 踏み分けていくこと。この句では昔から、人が歩いているのか鹿
 なのかが議論されていましたが、鹿と見るのが穏当です。
 【鳴く鹿の】
 秋には、雄の鹿が雌を求めて鳴くとされており、そこに遠く離れ
 た妻や恋人を恋い慕う感情を重ねています。
 【声聞くときぞ秋は悲しき】
 「ぞ」は強意の係助詞で、文末を形容詞「悲し」の連体形「悲し
 き」で結びます。「は」も係助詞で、他と区別してとりたてて、
 というような意味になります。ここでは「他の季節はともかく、
 秋は」という意味です。
 全体では「(そういう時は他にもいろいろあるけれど)鹿の鳴き
 声を聞くときは、とりわけ秋が悲しく感じる」という意味です。
 
■□■ 作者 ■□■

  猿丸太夫(さるまるだゆう。生没年不詳)
 伝説の歌人で、三十六歌仙の一人。元明天皇の頃の人など諸説あ
 りますが実際には不明です。この歌も、古今集では「詠み人知ら
 ず」として紹介されています。鴨長明の歌論書「無名抄」には
 「田上(たなかみ)の下に曽束(そつか・現在の滋賀県大津市)
 といふ所あり。そこに猿丸太夫が墓あり」と記されています。
 
■□■ 鑑賞 ■□■

  人の住む村里から遠く離れた、人の来ない山奥に、絢爛たる紅
 葉がびっしり敷きつめられたように散っている。赤や黄色の絨毯
 のような情景の中から、紅葉を踏みながら鹿が現れる。角の長い
 雄の鹿が、天を仰いで一声寂しく高く鳴く。
  おそらくどこへ行ったのか分からない連れ合いの雌の鹿を求め
 て鳴いているのであろう。
  その声を聞いていると、秋はなんて悲しい季節なのだろうと思
 えてくるのだよ。
             ◆◇◆
  秋になると、雄の鹿は雌を想って鳴くとされていました。
  このテーマは「万葉集」にもよく取り上げられており、奈良の
 昔からの定番テーマだったようです。
  さらにこの歌は、秋を美しく彩る「紅葉」が地面いっぱいに散
 り拡がった情景を表現しています。まばらな木の間をすり抜ける
 茶色い鹿と紅葉の赤と黄。
  こんな色彩感豊かな世界で、わびしく鳴く鹿の声を聞いて、作
 者は秋の悲しさを全身に感じ取るのです。
  本来、秋は米の収穫の時期で、実り豊かな楽しい季節のはず。
 農村生活からはこうした発想はあまり出てきません。
  この歌は、貴族という都会生活者の感覚から生まれたものとい
 えるでしょう。
             ◆◇◆
  さて、菊の名所は紹介しましたが、紅葉の名所はどこでしょう
 か。
 北海道なら阿寒国立公園や函館の五稜郭公園が、東北では青森の
 岩木山や福島の中津川渓谷が有名です。
  また、北陸では新潟県の湯沢高原や富山の高岡古城公園、石川
 県の那谷寺や鶴仙渓、関東では茨城の袋田の滝や東京の高尾山や
 代々木公園、東海地方では愛知の香嵐渓や、三重の伊勢神宮が有
 名です。
  また、近畿では京都の神護寺や東福寺、奈良の奈良公園や室生
 寺、和歌山の那智の滝が、中国では鳥取の大山国立公園や広島の
 宮島、山口の長門峡が有名です。
  四国では愛媛の西山興隆寺や高知の中津渓谷が、九州では福岡
 の秋月城や大分の耶馬渓が有名です。11月も半ばですので、見ご
 ろを過ぎている場所もありますが、まだまだ12月まで美しい紅葉
 が堪能できそうです。

 

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