ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

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【2001年12月10日配信】[No.045]
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 【今回の歌】

   田子の浦に うち出(い)でてみれば 白妙(しろたへ)の
    富士の高嶺(たかね)に雪は降りつつ

          山部赤人(4番) 『新古今集』冬・675

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  今年もはや師走を迎えました。
  忘年会、クリスマス、そして大晦日。何かと忙しくも楽しい年
 末ですが、皆さんにはどんなご予定がおありでしょうか。
  さて、毎年秋のはじめに早々と届くのが、富士山の初冠雪のニ
 ュース。今年は9月22日でしたが、このニュースを耳にすると、
 もう富士山では冬がはじまるんだなあ、これから冬へと季節が進
 んでいくんだなあと、ちょっとした感慨にひたれます。
  雪はどこでも白いですが、富士の斜面を飾る雪は特に白く見え
 ますね。今回は、そんな一首をお送りしましょう。

■□■ 現代語訳 ■□■
  
  田子の浦に出かけて、遙かにふり仰いで見ると、白い布をかぶ
 ったように真っ白い富士の高い嶺が見え、そこに雪が降り積もっ
 ている。
 
■□■ ことば ■□■

 【田子(たご)の浦に】
 田子の浦は、駿河国(現在の静岡県)の海岸です。ただし、現在
 の田子の浦と同じ場所かは不明です。「に」は作者の立っている
 場所を示す格助詞です。
 【うち出(い)でてみれば】
 「うち」は動詞の前につく接頭語で、言葉の調子を整えるために
 付けます。「みれ」は動詞「見る」の已然形で、接続助詞「ば」
 は已然形から続くと確定条件を表します。
 「出でてみる」は「出る+見る」という2つの動作を表したもの
 で「浦に出て眺めてみると」という意味になります。
 【白妙(しろたへ)の】
 「白妙」はコウゾ類の木の皮の繊維で織った純白の布のことです。
 富士に掛かる枕詞になっています。
 【富士の高嶺に】
 「富士山の高い嶺(みね)」のことです。
 【雪は降りつつ】
 「つつ」は反復・継続の接続助詞で、時間の継続の意味がこめら
 れており、雪が連綿と降り続いていることを表します。ただ、雪
 が富士に降り続いていることは田子の浦からは見えませんので、
 作者の想像でしょう。

■□■ 作者 ■□■

  山部赤人(やまべのあかひと。生没年未詳、7〜8世紀頃)
  奈良時代初期の宮廷歌人で、万葉集第3期の代表的歌人です。
 生没年は分かりませんが、天平8(736)年頃没したとも言われ
 ています。身分の低い下級役人だったようで、天皇の行幸などに
 同行して歌を捧げたり、皇室で不幸があれば挽歌を詠むなどの仕
 事が多かったようです。
  紀貫之は古今集の序で赤人を柿本人麻呂と並ぶ「歌聖」として
 讃えています。
 
■□■ 鑑賞 ■□■

  冬のある日、田子の浦へ出てみた。するとはるかに望む富士の
 霊峰が、まるで真っ白な布のように雪をかぶった姿で雄大にそび
 えている。さらにその頂上には今も雪が降り続いているのだ。
             ◆◇◆
  澄み切った空気がピシリッと音を立てそうなくらい寒い冬の日。
 息が白くなるそんな日に、海岸べりから富士山を眺めてみましょ
 う。
  冬の富士は「白富士」と呼ばれる、まるで1枚の純白のヴェー
 ルをふわりと置いたような世界。そこにしんしんと雪が降ってい
 るのです。それはずっと、この歌の中で降り続きます。
  想像しただけで鳥肌が立つような、なんと美しい世界でしょう
 か。こんな見事な情景をよく描き得たものです。
  青い海辺と真っ白な霊峰と、そこに音もなく降り積もる雪。広
 大で超然とした、幻想的な絵のようです。
             ◆◇◆
  この歌は、幽玄を主題に置いた「新古今集」の中から取られた
 一首です。新古今集撰者の藤原定家がいかにも好みそうな一首だ
 といえますね。
  実はこの歌は、最初に収録された「万葉集」では
 「田子の浦ゆ うち出でてみれば 真白にそ 
   富士の高嶺に 雪は降りける」
 となっています。
 「白妙の」は布の白さにたとえた表現ですが、こちらは「真白に
 そ」となっていて、より直接的な言い方になっています。最後の
 「ける」も「降ってるなあ」というような、今初めて気が付いた
 感動を示す表現になっていて、百人一首の歌よりずっと素朴であ
 ることが分かるでしょう。
  一方、この新古今集バージョンは表現がずっと繊細で、「降り
 つつ」のように時間の流れが消えたような幻想的な情景となって
 います。男ぶり、素朴さの万葉集と、都会的で幽玄、繊細な新古
 今集の違いを考えるのにいい一首だといえるでしょう。
             ◆◇◆
  さて、この歌の舞台は田子の浦と富士山です。富士山は新幹線

 の車中で見えるのは言うまでもありませんが、この歌の田子の浦
 は現在とは異なる場所にあります。
  静岡県庵原(いはら)郡由比(ゆい)町から西南の海岸がそれ
 で、倉沢や由比、蒲原のあたりがかつての田子の浦です。
  東海道新幹線の新富士駅で下車し、JR東海道本線に乗り換え、
 由比駅か蒲原駅で下車するとよいでしょう。
  現在の田子の浦はそこよりもっと東の富士市の海岸です。

 

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