ちょっと差がつく百人一首講座/京都のおかき・あられ・おせんべい・和菓子処小倉山荘

『ちょっと差がつく百人一首講座』バックナンバー一覧へ

【2001年9月10日配信】[No.036]
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 【今回の歌】

  あしびきの 山鳥(やまどり)の尾の しだり尾の
   長々し夜を ひとりかも寝む

          柿本人麿(3番) 『拾遺集』恋3・773

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

  9月になりました。秋の到来です。
 秋といえば、虫の声の響く長い長い秋の夜長。気候も良いので
 読書などをしてひとりじっくり思索してみるのに最適な季節で
 す。けれど、届かぬ恋をしてひとり思い悩むなら、秋の夜長は
 永遠と思えるほどさびしい時間かもしれません。
  そんな独り寝の寂しさを、山鳥の長い尾で表現し、ダイナミ
 ックに音を楽しむ歌が、今回紹介する一首です。

■□■ 現代語訳 ■□■
  
  山鳥の尾の、長く長く垂れ下がった尾っぽのように長い夜を
 (想い人にも逢えないで)独りさびしく寝ることだろうか。
 
■□■ ことば ■□■
 【あしびきの】
  山に関係した言葉にかかる枕詞で、ここでは「山鳥」にかか
 っています。
 【山鳥の尾の】
 「山鳥」はキジ科の鳥で雄の尾が非常に長いと言われます。そ
 のため「長いこと」を表す時に使われます。「の」は連体格助
 詞で「…で」や「…であって」の意味です。全体で「山鳥の尾
 であって」のような意味になります。
 【しだり尾の】
 「しだる」は「下に垂れる」という意味の動詞で、連用形「し
 だり」に「尾」が付いた名詞です。「の」は「のような」の意
 味の格助詞で「下に垂れる尾のような」の意味。最初からここ
 までが、「長々し夜」を導き出す序詞になります。
 【長々し夜を】
 長い長い夜のこと。「長し」を重ねることで強調しています。
 【ひとりかも寝む】
 「(逢いたい人にも逢えないで)ひとり(寂しく)寝ることで
 だろうかなあ」という意味。「ひとり」は名詞ではなく、「ひ
 とりで」という意味の副詞です。「か」は疑問の係助詞、「も」
 は強意の係助詞、「む」は推量の助動詞です。
 
■□■ 作者 ■□■

  柿本人麿(かきのもとひとまろ。不明〜709?)
 持統天皇の頃の宮廷歌人で、三十六歌仙の一人。下級官吏で710
 年ごろに石見国(現在の島根県益田市)で死んだといわれます。
 万葉集の代表的歌人の一人で、長歌20首、短歌75首が収められて
 います。
 
■□■ 鑑賞 ■□■

  秋の夜は長い。長くて長くて時間を持て余す。考えるのは、あ
 の日出会った美しいあなたのこと。いったいあなたは今ごろ何を
 考えているのだろう。他の誰かと閨をともにしているんじゃない
 だろうか。夜は長く、いつまでも明けない。長〜い長〜い、山鳥
 の雄のように長い夜。今夜もひとり寂しく眠るのだろうか。
             ◆◇◆
  「秋の夜長」はずいぶん昔から日本人の共通概念だったようで
 す。万葉の昔からすでにこんな歌があったのですね。秋の夜長を
 表すのによく使われる恋歌です。
  山鳥は日本の山にいる野鳥ですが、雄の尻尾が長いので、「長
 い」ことを表すのに使われます。また山鳥は、昼は雄雌一緒にい
 て、夜は別々に分かれて峰を隔てて眠るという伝承があるので、
 ひとり寝を表す時にも使われます。
  つれない異性を想って一人過ごす夜の長いこと。また、秋は気
 候がだんだん涼しくなってくるので寂しさがいっそうつのるので
 しょう。
  そういえばこの歌は、上の句すべてが「長々し」にかかる序詞
 になっています。この序詞もまたとっても長いもので、歌にひっ
 かけてあるのかもしれません。「山鳥の尾の しだり尾の」と語
 尾を合わせることで、音感の面白さも特筆される印象深い名歌で
 す。
             ◆◇◆
  この歌の作者、柿本人麿は、705年ごろに石見の国司として赴任
 し、そこで亡くなったといわれています。石見の国は現在の島根
 県の西の端、益田市にあります。
  益田市は、中世の豪族益田氏の本拠となったところ。山陰の小
 京都として有名な津和野町に隣接し、史跡や名所が数多く残され
 ています。
  柿本人麿ゆかりの柿本神社があるのはJR益田駅の西ですが、近
 辺には雪舟の郷記念館や雪舟庭園(万福寺)、県立万葉公園など
 もあります。津和野なども一緒に訪れれば、いい旅になることう
 けあいでしょう。

 

『ちょっと差がつく百人一首講座』バックナンバー一覧へ


せんべい,煎餅,おかき,あられ,おせんべい【長岡京小倉山荘】
京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】TOPへ