京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】今昔物語集 宇治拾遺物語 古今著聞集 古本説話集 〜平安の物語〜

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 【平安の物語】絶望の淵より。一首の歌に託した想い。

  むかし下野国に、長年ともに暮らしてきた睦まじい夫婦がありましたが、
  ある時ほかに好い縁を見つけた夫が家をとびだし、
  新しい妻と同居をはじめてしまいました。

  夫は浮かれに浮かれ、住み慣れた家やもとの妻のことを顧みることもなく、
  家財のいっさいがっさいを新しい妻の家に移してしまったので、
  もとの妻の家にはたった一つ「馬槽(うまぶね)」だけが残されました。
  馬槽とは、馬のえさを入れる桶のことです。

  何もかも失って明日の暮らしもたたなくなったもとの妻に、
  夫はさらにとどめを刺すしうちに出ました。
  真梶丸(まかじまる)という名の童に、残した馬槽を取りに行かせたのです。

  ○真梶丸「奥様、馬槽を取りに参りました」

  ●元の妻「真梶丸や、あの人は私と一切の縁を断つおつもりなのですね。
            このような桶までわざわざ取りによこすとは……」

  もとの妻はそう言うと、馬槽をかかえて帰ろうとする真梶丸を引き留め、
  夫への言づてを頼みました。

  ●元の妻「あの人はもう私からの文など読んでは下さるまい。
            だから真梶丸や、今から言う歌をしっかり覚えて、
            きっときっとあの人に伝えておくれ。きっとですよ……」


  (歌)ふねもこじまかぢもこじな今日よりはうき世の中をいかで渡らむ

  (訳)馬槽(うまぶね)も真梶丸(まかじまる)も、
      二度と私のもとには戻ってきまい。
      船(ふね)も舵(かじ)も失って大海へこぎ出すのは不可能なように、
      私もこれからどうしてこの世の中を生きてゆこう……。


  真梶丸は帰ると、もとの妻からあずかった歌をそのままあるじに伝えました。
  夫はその歌を聞くや、いきなり新しい妻の家に運び込んだ家財を車に乗せ、
  わき目もふらずもとの妻の家のほうへ走り出しました。

  情にほだされてか、浮かれていた自分からはたと我にかえったのか。
  あるいは、もとの妻とすごした日々を想い出して懐かしくなったのか。
  いずれにしても、夫が目指すその先には、身のつらさ切なさを
  たった一首の歌に託したいじらしい女性がいることだけは確かでした。

                                    脚色  江幡店長  出典『今昔物語集』

 

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