京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】今昔物語集 宇治拾遺物語 古今著聞集 古本説話集 〜平安の物語〜

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 【平安の物語】亡くなる妻への愛情。亡き妻からの愛情。

  むかし、さる片田舎に男が住んでいました。
  最愛の妻が産後の病に倒れてからというもの、
  片時もそばを離れず毎日看病にあけ暮れ暮らしていました。

  妻の病は日増しに悪くなり、やがて最期の時を迎えました。
  男は妻の苦しむ様を見るにつけ、薬を求めるだけのゆとりがない
  わが身の不甲斐なさを嘆きましたが、どうすることもできません。

  せめて暑苦しく乱れている妻の髪を結いつけてやろうと、
  そばにあった手紙を破って「こより」にし、髪を結ってやりました。
  それが妻に最後にしてやれるたったひとつの小さな愛情でした。

  妻を亡くしてからの男は、すっかりふぬけのようになってしまいました。
  働く気も失せ、もう一度妻に会いたい、もう一度妻に会いたい、と、
  そればかりを想って日々嘆き暮らしていました。

  そうして四十九日を迎えようとする夜。
  寝所にふと、妻が現れました。
  男は夢かと疑いましたが、肌のぬくもりや黒髪のつやなど、
  まさに生前の元気だったころの妻そのままです。

  ◆男「ああ、ああ、お前の命は尽きたと見えたが、
        やっぱり生きていたのだな!戻ってきてくれたのだな!!」

  ◇妻「生前はつきっきりの看病。死後も頭の中は私のことばかり。
        嬉しいけれど、そんなあなたを見ているのは辛いのです……。
        最後にあなたの願いに答えてあげたくて、会いに来ましたよ」

  夫婦はこうして泣きながら一夜の枕を交わしました。
  明け方、男が目覚めると、妻の姿はありませんでした。
  夢にしては生々しい夢であったと、大きなため息を吐いた男の前に──。

  「こより」が一本落ちていました。
  広げてみると、手紙の破れとぴったり重なり、
  いまわの際に妻の髪を結うてやったあのこよりに間違いありませんでした。

  ◆男「そうか、お前は別れを言いに来たのだな──」

  男はこの時はっきり、最愛の人がもうこの世にいないことを知ったのでした。

                                        脚色  江幡店長  出典『発心集』

 

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