京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】今昔物語集 宇治拾遺物語 古今著聞集 古本説話集 〜平安の物語〜

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 【平安の物語】家族を棄て、おのれを棄てた男の物語。

  仁明天皇の寵臣である良峯宗貞(よしみねのむねさだ)は、
  天皇の格別の配慮に答えようと朝も夜もなく誠心誠意仕えていましたが、
  やがて天皇が崩御されると、世をはかなんで出家の決意をしました。

  しかし、世を棄てて法師になるにしても、
  気がかりは他に身よりのない妻と、男の子と女の子の二人のわが子……。
  宗貞はついに妻子には何も告げず、心を鬼にして姿をくらましたのでした。

  数年後、宗貞は笠置のお堂の片隅で修行に励む修行僧となっていました。
  ある日、ふだんは人影のない、暗く寂しい山寺なのに、
  5、6人の男女が連れだって参拝に来るけはいがします。

  「消えてしまったあの方の居所をどうかどうかお教えくださいませ」

  一人の女がそう願掛けをした声を、宗貞は聞くともなく耳にしました。
  確かに聞き覚えのある声──。
  それは紛れもない、都に残してきた妻の声に間違いありませんでした。

  かつて山歩きなど知らなかった女が、失踪した夫を尋ねて
  山深い寺まで巡っている事実を知り、宗貞は衝撃を受けました。
  見慣れた男女の従者それぞれの背には、懐かしい息子と娘の顔も見えます。

  「ここに!!──わしはここにおるぞ!!」

  暗がりから思わず叫びそうになったその言葉を必死で飲み込んで、
  宗貞はひたすら身を隠しました。
  現世への思いを断ち切ることが、仏教の大切な教えだったからです。

  妻の一行は一泊して、翌朝、霧立ちこめる奥山のお堂をあとにしました。
  7歳になり、顔つきもしっかりしてきた息子。まだあどけない4歳の娘。
  馴染みの従者たち。そして、げっそりとやつれた妻の横顔。

  もう二度とまみえることもないであろう、
  愛すべき家族たちが霧の中へすっかり消えてしまってから、
  宗貞は声をあげて男泣きに泣きました。

    ちりぬればのちはあくたになる花を思ひしらずもまとふ蝶かな

  この宗貞こそは、のちにかの小野小町や在原業平らとともに
  六人の和歌の名手──「六歌仙」の一人として讃えられる、
  遍照(へんじょう)その人です。

                                    脚色  江幡店長  出典『今昔物語集』

 

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