京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】今昔物語集 宇治拾遺物語 古今著聞集 古本説話集 〜平安の物語〜

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 【平安の物語】棄てた嬰児が生きている!!真に人の情を知る者の話

  所は平安京大内裏の門の下。
  ある貧しい男が生活苦のため、生後わずか10日の
  玉のように美しいわが子を泣く泣く棄ててどこかへ去ってゆきました。

  屋外に子を置き去りにしたのは、生活にゆとりのある人に
  拾って養ってもらおうという楽観的な観測からではありません。
  そもそも生きるために強盗や窃盗、追い剥ぎなどが横行した時代です。

  そして何よりも、当時の都大路には野犬があふれていました。
  この男にとっては、わが子がその餌食になることを覚悟の上の、
  悲壮な決断だったのです。

  数日後、男はせめてわが子の最期を見届けようと門の下に戻ってきました。
  ところが赤ん坊は犬に食べられてしまうどころか、
  泣きもせずにすやすや愛らしい寝息をたてて眠っています。

  「腹を空かせた犬があたりをうろついておるのに、
    無事でいられようはずもない。なにかわけがあるのであろう」

  男は不思議に思い、近くの家の塀の陰に隠れてしばらく様子を窺いました。
  すると案の定、数匹の痩せ犬が門の周りに集ってきましたが、
  犬たちはなぜかそれ以上嬰児に近づこうとしません。

  さらにしばらくして、ひときわ大きな、凶暴そうな白犬が姿を現しました。
  白犬はボス的な存在らしく、痩せ犬たちは一目散に逃げてゆきました。
  男も今度ばかりはわが子の命もこれまでと観念しました。

  ところが白犬は嬰児の頬を嘗めるばかりで、噛みつくそぶりはありません。
  そして嬰児を胸の中にくるむようにして、隣に寄り添って寝そべりました。
  なんと白犬は、赤ん坊に乳を与えはじめたのです。

  男はこの時、真実を悟りました。生まれて間もないわが子が、
  空腹からも外敵からも免れ、今日の今日まで生きながらえてきた真の理由を。
  やがて男の心を見透かすように、白犬は男の方を一瞥して去ってゆきました。

  男はわが子めがけて走り寄りました。そしてしっかりと抱きあげました。
  人の情などわからないと言われる獣ですら、棄てられた幼な子を
  哀れに思って養ってくれたこと──それがよほど衝撃だったのでしょう。

  「わしは人間ではないか!!ましてわしはこの子の父親ではないか!!」

  泣いているような、怒っているような男の叫びでした。
  男が大粒の涙を流すその下で、
  赤ん坊がきょとんとした目で父親を見上げていました。

                                    脚色  江幡店長  出典『今昔物語集』

 

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