【平安の物語】平安時代の姑いびり? 〜 姨母棄山の物語
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│ ■ 「うばすて山」物語の知られざるテーマ │
│ ■ オニ嫁吼える!「あのおばちゃんなんとかしてよ!!」│
│ ■ オニ嫁さらに吼える!「いっそ棄ててきたら?」 │
│ ■ 月の照るのが悲しくて…… │
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■ 「うばすて山」物語の知られざるテーマ
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「うばすて山」のお語はほとんどの人が一度は聴いたことがあるか
と思います。私も記憶は定かではありませんが、幼い頃に保育園で
先生がこのお話を紙芝居で語ってくれたような、テレビの『まんが
日本むかしばなし』で見たような、そんな思い出があります。
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ところがこのお話、『今昔物語集』を読み返してみると子供に読ん
で聴かせるにはなんとも生々しい、嫁の「姑いびり」がテーマだっ
たことに驚かされます。今も平安の昔も変わらぬ、嫁と姑の果てし
なき平行線の関係……。今回はそんな「姨母棄山(をばすてやま)」
のお話です。
■ オニ嫁吼える!「あのおばちゃんなんとかしてよ!!」
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むかしむかし、信濃の国に男がいました。家には妻のほかに年老い
た姨母(をば=母方の姉妹)がいましたが、この姨母と男は長年仲良
く一緒に暮らしてきたため親子のような親密な関係でした。──つ
まり、妻にとって姨母は、「姑」でもないのに「姑のような」存在
でした。
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妻は当然、これが気に入りません。しかも姨母はすでに老いて腰が
曲がり、歩くのもままならない生活。妻の気持ちを現代語で代弁す
れば、「なんで次男坊に嫁いだはずなのに老人介護の憂き目が回っ
てくるのよ!」といった感じでしょうか?ともかく妻は、来る日も
来る日も夫の耳のそばで、姨母の悪口を言い続けました。
■ オニ嫁さらに吼える!「いっそ棄ててきたら?」
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はじめは聞く耳もたずだった夫でしたが、毎日毎日同じ悪口の繰り
返しを聞かされるうちだんだん苦痛になってきて(かと言って姨母
を心から憎んだりはしませんでしたが)、いつしか姨母さえいなく
なれば妻のイライラも解消し、夫婦円満&自分も楽になれるかもし
れない……と思うようになりました。
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「ここまで来ればもうこっちのもの!」──まさに、妻の粘り勝ち
という形になりました。しかし、これで勝負の決着が本当についた
わけではありません。妻は夫が精神的に追い詰められ、弱り切るこ
の時をじっと待っていたのです!この時妻は、絶好のタイミングで
ついにあの一言――憎っくき姨母に引導を渡すあの一言を吐いたの
でした。
―― あの醜い姨母を、深い山奥に棄ててきて ――
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妻に「姨母を棄てよ」と責め立てられて、そんな酷いことができる
はずはないと思っていた夫であったが、さらに妻にきつく責め立て
られると、もはや観念するしかなかった……。
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◇ 男 「おばあちゃん、お出でなさい。山のお寺でそれはそれ
はありがたい法会があるようです。連れて行ってあげ
ましょう」
◆ 姨 母 「はあ、それはよいことじゃ。ぜひ行ってみたいのう」
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男は姨母を背負って山に登った。そうして姨母がとても一人では降
りてこられないほどの高さまで登ったあたりで、突如姨母をうち捨
て、ひとり山を駆けおりたのである。
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◆ 姨 母 「おうい、おうい……ぉぅぃ、ぉぅぃ……」
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男は逃げるようにして山を走った。
事情も知らず、たったひとり暗い山奥へ取り残された姨母の声が―
―足腰も立たず、男のほかに頼る者もない、姨母の心細げな声がず
っと後を追ってくるのを振り切るようにして……。
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■ 月の照るのが悲しくて……
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さて男は家に帰りつき、久しぶりに妻のさっぱりした表情を見るこ
とも叶って、「やっとこれで平穏な日々が送れる」と安堵の息を漏
らしたはずでしたが……。
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ふとすすけた食卓を眺めると、夕飯の席で或る時は楽しく語り、あ
る時は厳しく叱った姨母の姿がそこにある。ふと着ている服に目を
移すと、穴の開いた生地に古い継ぎの跡があり、自分が畑仕事に精
を出している間、折れ曲がった腰をさらに小さく丸めながら、ひと
り黙々と針仕事をしてくれていた姨母の姿がそこにある。
長年ともに暮らしてきた家の中を見渡せば、真実の親のように自分
を慈しんでくれた姨母との、あたたかな思い出が詰まっていない場
所はひとつもなかったのだった……。
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男は寝床に入ってもそわそわ落ち着かず、夜が更けても全く眠られ
なかった。すき間だらけの壁から、山の上に昇った月の光が明々と
差しこんでくる。その月影を仰いで、男は独り言のようにこうつぶ
やくのだった。
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│我が心なぐさめかねつさらしなやをばすてやまに照る月をみて│
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┌ 私のこころをなぐさめることなど ┐
│ とうていできはしない │
│ 更級の姨母を棄ててきた山の上に │
└ 皓々と冴えわたるあの月の輝きを見ては ┘
男は詠み終えると、いつしか家を飛び出し、無我夢中で走り出して
いました。月の美しく輝くあのをばすて山に、大切な大切な母が待
っていると知ったのでしょう。
原話『今昔物語集』 脚色(90%) 江幡
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