京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】今昔物語集 宇治拾遺物語 古今著聞集 古本説話集 〜平安の物語〜

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 【平安の物語】芥川龍之介名編の原点!!燃えさかるわが家に喜悦する男。

  芥川龍之介の名作『地獄変』
  私の大好きな一編です。読んでない方はぜひ一度!
  読んだ方は原典を読んでふたたび芥川に耽る春、というのもオツですね♪


  むかし絵仏師(仏画の制作に従事した僧)の良秀という男がいました。
  ある風の強い日、隣の家から火が出てわが家に迫ってきそうになったので、
  良秀はあわてて大路へ逃げ出しました。

  依頼があって途中まで描きかけていた大事な画も、
  妻子すらも連れずに逃げてきた良秀でしたが、一旦表に出てしまうと、
  向かい側からただ黙って火のゆくえを見守っているばかりでした。

  火はすでにわが家へ燃え移り、内側から黒煙をあげ始めていました。
  近所に住む者や、野次馬の中で良秀を見知った者は、
  口々に「大変なことになって」「お怪我は?」と心配そうに声をかけました。

  ところが、良秀はまったく動じるけはいもありませんでした。
  やがてわが家が紅蓮の焔につつまれる様を見るに及んでも、
  うんうんとうなずいたり、時には笑ってすらいるのです。

  ◆良秀「いやはや、これはとんだ儲けものをしたわい。
          これまでずいぶんと下手に描いてきたものよなぁ……」

  ◇隣人「なんと!この大変な時に、わけのわからぬことを申して。
          妻子が逃げ遅れているというのにあきれ果てたお人じゃ!!」

  ◆良秀「なんの、これまでわしは数え切れぬほど
          背に火焔を背負った不動尊の絵を描いてきたが、
          ずいぶん下手に描いてきたものだと思いやられてのう」

  隣人たちは、怪訝そうな目を見合わせました。
  良秀の目は爛々と輝き、あくまで真剣なのです。

  ◆良秀「見よ、あの焔を!
          焔とはあのように燃えるものだと、たった今悟ったわい。
          儲けものじゃ、儲けものじゃ!!

          これでますます絵の才覚に磨きがかかり、
          仏画の依頼も増え、富も名もあがるというものじゃ!
          もっともお前たちのように才の無い者は──」

  せいぜい無才に生まれた身の上と、燃え失せる家を惜しんでおればよい、
  と言い放ち、良秀はわが家が燃え尽きるまで
  いつまでも焔を眺めていたのでした。

  こうして絵仏師良秀は、周囲の人たちから憎まれ、嫌われはしたものの、
  その後描いた不動尊の絵は火焔のよじれ方が見事だと賞賛され、
  「良秀のよじり不動」として長く尊ばれたのです。


                                  脚色  江幡店長  出典『宇治拾遺物語』

 

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