京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】今昔物語集 宇治拾遺物語 古今著聞集 古本説話集 〜平安の物語〜

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 【平安の物語】妻の殺意。盗人に救われた命。

  むかし民部の大夫で則助(のりすけ)という男が
  所用を済ませて夕方ごろに屋敷へ帰ってきたときのことです。
  物陰からすうっと現れた見慣れない人影がひとつ――。

  ▽則助「くっ、何者じゃ!!」

  ▼男  「怪しい者ではございません。
          ちと、内々にお耳に入れたいことがございましてね」

  と、仔細ありげに言うので、則助は従者たちをいったん遠ざけ、
  男の話を聞きはじめました。

  ▼盗人「実は私、盗人でございます。
          あなた様のそのご乗馬があまりに見事なもので――」

  男は、則助の栗毛の乗馬が欲しくて欲しくてたまらなくなり、
  盗んでやろうと思い立ったというのです。
  そして先回りし、屋敷の中にしばらく潜んでいたことをうち明けました。

  ▼盗人「ところが、お屋敷の中で奥様が、いかつい男に鉾を渡し、
          小声で指図したあと天井にのぼらせました。
          これはなにやらよからぬたくらみ事でも?と思いましてね」

  ▽則助「ふむ……。同じ悪人の直感というやつか?
          まあよい、よくぞ申してくれた。しばらくそこで待て」

  則助が屈強な侍3人を呼び出し、天井裏や屋根を調べるよう
  指示を出している間、「待て」と言われた盗人は、
  自分もからめ取られるのではないかと気が気ではありませんでした。

  やがて3人の侍が一人の男を引っ捕らえて来ました。

  ▽則助「なにゆえ天井裏になど隠れておったのじゃ?」

  ●男  「殿がお眠りになりましたところを、天井からこの鉾をさしおろし、
          ズブリと一刺しに突き殺すよう、命じられておりました」

  こうして妻の悪事が露見しました。
  しかし則助は男を検非違使(現代の警察)に突き出した他には、
  特に妻を責めることはしませんでした。

  ▽則助「さて、盗人よ。
          わしの乗馬を盗もうとしたキサマの悪心はやはり許し難い。
          が、命を救われた恩は返さねばなるまいな」

  則助はそう言うと、見事な栗毛の鞍上に盗人を乗せ、
  馬の尻を力の限りに蹴り上げました。
  小さくなってゆく盗人の後ろ姿を眺めながら、則助の気持ちは複雑でした。

  信頼する妻に殺意を抱かれ、不埒な盗人に命を救われる。
  「世の中、何が良くて何が悪いのか、とんとわからぬわい」
  それがこの時の則助の、偽りなき感慨でした。


                                    脚色  江幡店長  出典『今昔物語集』

 

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