京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】今昔物語集 宇治拾遺物語 古今著聞集 古本説話集 〜平安の物語〜

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 【平安の物語】届け先を間違えたおくりもの。悲恋のゆくえ。

  むかし家柄のそう悪くない公達で、国司を勤める男がいました。
  情け深い人がらでしたが、ある時、若い女に恋をしたかと思うと、
  数年ともに暮らしてきた妻のもとを去って突如その女と同居しはじめました。

  もとの妻が心細い思いをしているとはつゆ知らず、
  国司は難波のあたりを通り過ぎたとき、新しい妻を喜ばせようと
  小さな「蛤」と「海松(みる、海藻の一種)」を拾って童に持たせました。

  ◆国司「よいか、これを京に持ってゆき、あの人に差し上げよ。
          面白いものを見つけましたので差し上げます、と伝えるのじゃ」

  童はあるじから託された品をかかえて京へ上りました。
  しかし、童はすっかり勘違いしていたのでしょう、
  彼が入京後まっ先に向かったのは、あろうことかもとの妻の家でした。

  ●前妻「ま、まあ。あの人が私に――??
          そんなはずはないわ、私は棄てられた女ですもの……。
          坊や、きっとそれは別の愛おしい方に贈られたのではないかしら?」

  もとの妻がそう尋ねたところで、年端の行かない童は一向に了解できません。
  もとの妻は結局、贈りものを受け取り、水槽に入れて飼い、
  その日以来、山国では珍しい蛤と海松を毎日眺め興じました。

  十日ほど経って、国司は京へ戻ってきました。

  ◆国司「いつぞや贈りました蛤と海松はいかがでしたか?
          姿が面白いので、急いで使いを立ててお届けしたのです」

  ○新妻「は?そんなものは届いてませんよ。
          惜しいことをしたわ!
          焼き蛤も大好物だし、海松は酢に入れると美味しいのにね〜」

  新妻の返答があまりに俗っぽいので、国司は一気に興が褪める思いでした。
  童を呼び出して仔細を尋ねてみると、もとの妻のもとに届けたとわかり、
  国司は烈火のごとく怒って童に取り戻してくるよう命じました。

  ●前妻「そう……。やはりそうでしたか。
          初めから、きっと何かの間違いではと思っておりましたのよ。
          なのに私、すっかり浮かれてしまって……」

  もとの妻はそう言ってひとしきり泣きました。
  童は品物を受け取り、急いで国司のもとに戻りました。
  蛤と海松を丁寧に包んだ紙を開いてみると、和歌が一首――。

  【歌】あまのつと思はぬかたにありければみるかひもなくかへしつるかな

  【意】海からのお土産は、お届け先違いの品でしたそうですね。
        見て楽しむ甲斐もなく、お返し申し上げました。

  ◆国司「おお、蛤も海松もいきいきとして。
          私からの贈り物を、これほど大事にしていてくれたとは……」

  せっかくの土産を「食べられなくて惜しい」と語った新妻のことが
  思い合わされ、また、これほどの仕打ちに恨み言ひとつ言わない
  もとの妻の心ゆかしさを、国司はつくづく思い知ったのでした。

  ◆国司「童や、もとの妻のもとへ使いに走れ!
          蛤も海松も、大事にしてくれた者の元へ帰りたいと申しておるゆえ、
          今宵わしが連れて帰らねばならん、と、そう伝えるのじゃ。
          そうそう、今度は決して行き先を違えるでないぞ!!」


                                    脚色  江幡店長  出典『今昔物語集』

 

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