京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】今昔物語集 宇治拾遺物語 古今著聞集 古本説話集 〜平安の物語〜

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 【平安の物語】子のこころ親しらず?貧しい母娘の石清水詣で

  むかし、世におちぶれ、貧しく暮らす母娘がいました。
  その母は、かつて貴人に仕えていた美貌の人で、
  容色は中年にさしかかった今もまったく衰えを知りませんでした。

  それほどの美貌に恵まれながら、
  しかし、母は自分の幸せをすこしも望んでいませんでした。
  彼女の望みは、たった一人の身内である愛娘にそそがれていたのです。

  母にうり二つの美しい娘。17歳の女ざかり。
  自分がこの歳には、艶やかな衣裳を纏って、爽やかな貴公子と
  淡い恋の歌を交わしもしたのに……。

  最愛の娘に思うだけのことをしてあげられない貧困の中で、
  母はどうにもやり切れなくなり、
  ある日、思い立ったように娘を連れて石清水八幡宮に詣でました。

  「私はもうどのようになりましてもかまいません。
    昔じゅうぶんに、良い夢を見させていただきましたから……。
    でも、娘だけはどうかどうか、よい仕合わせが巡ってきますように」

  数珠をすりながら、母は一晩じゅう神様にお願いしつづけました。
  ところが肝心の娘はというと、母の膝でぐうぐう寝ているばかりで、
  明け方になってようやく目を覚ますという有様でした。

  「今日は固い決心をして、願をかけにきたのに。
    あなたの将来のことなのだから、心を込めて一緒にお願いすべきなのに。
    あなたはまるで他人事のように眠っているだけだったわ」

  母がすこし恨みをこめてそう言うと、娘は突如涙をあふれさせ、
  「本当は、たえられないほどに苦しくて──」
  と言ったきり言葉を詰まらせました。

  【歌】身のうさをなかなかなにと石清水おもふ心はくみてしるらん

  【意】私の身のつらさは、言葉ではとても言い尽くせない。
        石清水の神様なら、こんな切ない胸の内を
        きっときっと、汲み取ってくれるでしょう

  ──それは長い沈黙のあとに、ようやく娘の口をついて出た一首でした。

  母は無性に自分が恥ずかしくなりました。そして泣き崩れました。
  彼女の目には、将来のことなどまったく気にも留めず、
  ただ脳天気に生きているとしか映らなかったひとり娘……。

  しかしそれは、ただただ母に心配だけはかけまいと、
  辛さも悲しみもその小さな胸ひとつにしまい込みつづけてきた愛娘の
  純で切ない心づかいだったのでした。

  母娘の美しい情愛に神様が感応したのか、娘は八幡宮からの帰り道、
  偶然、西京に住むとある貴人の目にとまり、
  そのまま正妻として迎えられたのだそうです。

                                    脚色  江幡店長  出典『古今著聞集』

 

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