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 【平安の物語】古今東西最高の癒しの枕とは!?「邯鄲(かんたん)の枕」

  むかし唐の邯鄲で、仙人の術を会得した呂翁(りょおう)という道士が
  とある宿で休息していたときのことです。
  同じ宿に、なにやらわめいている若い書生がいました。

  「あぁ、学問を志す者がこの世に生を受けた以上は、国家試験に合格し、
    最高の地位にまでのぼり詰めて、うまいものを食い、好い女を侍らせ、
    一族を繁栄させてこそ世の楽しみというものだ。それなのに──」

  「──それなのに私はもう壮年にさしかかって、未だ畑仕事に
    精を出しているありさまだ。あぁ、嘆かわしい!!」

  呂翁はこれを聞くと荷物から枕を一つ取り出し、書生に手渡しました。
  奥の部屋からは、ぷーんとキビの香りが──。
  ちょうど今、宿の主人がキビ飯を蒸しているのでしょう。

  「この枕をお使いなさい。きっとあなたの望む栄華がかないましょう」

  書生は呂翁に言われるまま枕に頭をつけると、
  急に体が枕に吸い込まれていくような気分になり、
  気が付くと家路についていました。

  数ヶ月後、書生はふとした因果で裕福な家の娘をめとり、
  多額の持参金を手にしました。それを元手に衣服や馬車を買い、生活が
  派手になったかと思えば、念願だった国家試験にもあっさり合格しました。

  人生が好転しはじめると次々に好いことが重なりました。
  三年後には民のために治水を成功させ、さらに三年後に将軍として外敵を
  撃破し、その輝かしい功績によりついに宰相の地位にまで昇りつめました。

  その後50年以上の長きにわたり、彼は宰相の地位を守りつづけました。
  その間、彼の昇進を妬む者により2度えん罪を着せられ、家族まで殺され、
  やがて罪が晴れると2度宰相に復帰するという波乱の人生を送りました。

  80歳。彼は贅沢のかぎりをつくし、その子孫は名門として繁栄していました。
  国を牛耳り、思うままの人生を生きながら、一方で「名宰相」と讃えられ、
  書生にすぎなかった彼は人々に惜しまれつつ80余歳で世を去ったのでした。

  ぷーんとキビの香りが──。

  書生はそこではたと目覚めました。そばにはにっこりと頬笑む呂翁の顔。
  波乱の80年の生涯を生き抜き、疲れ果てた彼の前に漂ってくるものは、
  畑仕事に精を出していたころによく嗅いだ、懐かしいキビの香りでした。

  奥の部屋で宿の主人が蒸しはじめたキビ飯は、栄光と凋落の繰り返しだった
  長い長い80年を経たあとも、まだ、出来上がっていなかったのです。

  呂翁「若者よ、人生とはこのようなものなのかも知れんのう」

  書生「なるほど、よくわかりました。人の世の栄枯盛衰とは──。
        人の世の栄達。権力。富。名誉。善。悪。冤罪。恥辱とは――。
        いや、そもそも人の生死などというものは――。

        それらはすべて、キビ飯が蒸し上がるまでのほんの束の間の、
        うたかたの夢物語にすぎなかったのですね……」

  書生はそう言って深々と頭を垂れました。
  彼は今ほど自分という小さな小さな存在が
  愛おしく思えたことはなかったのでしょう。

                                    脚色  江幡店長  出典『枕中記』

 

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