京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】今昔物語集 宇治拾遺物語 古今著聞集 古本説話集 〜平安の物語〜

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 【平安の物語】一瞬にして盗人を改心させた秘密の灰の味

  草木も眠る深夜。
  隣の部屋よりごそごそと物音がするのに気づいたその家のあるじは、
  はたと眠りから覚めてしずかに布団から這い出しました。

  ふすまの破れ口から、息を殺して恐る恐る隣の部屋をのぞき見ると、
  ひとりの見知らぬ男が櫛や鏡などを手にしては
  いそいそと袋に入れています。

  ──盗人だ!!

  あるじは驚きましたが、声にはしませんでした。
  その盗人は、盗人というにはいかにも小心そうな男で、
  高価なものには手を出さず、目つきもおどおどしているのです。

  ──気弱そうな盗人だ。よし、捕まえてやろう!!

  家のあるじがそう思って隣室で待ちかまえているとはつゆ知らず、
  盗人は仕事を終えて部屋を出ようとしました。
  ところが、灰の入った火鉢を見つけるやいなや、ピタリと足を止めました。

  次の瞬間、盗人は何を思ったか、火鉢の中に手を突っ込んで
  猛然と灰を食べはじめました。そしてひとしきり食いあさると、
  盗んだ物をなぜかすべて元の場所に返してしまったのです。

  あるじはそこで隣室へ躍り込み、あっという間に盗人を組み伏せました。

  「おのれ、我が家に忍び込むとは許しがたいしわざだが、
    その振る舞いにはいささか心得かねるところがある。
    なにゆえ灰を食いあさった?なにゆえ盗品を返したのじゃ?」

  盗人はすっかりしおれて、およそこんなことを語りました。

  ・もともと自分には、物を盗む心などなかった。
  ・食べ物が無くなり、空腹のあまりこのような悪心を起こした。
  ・麦の粉を見つけたので夢中で食べあさり、腹がいっぱいになったが、
    それが灰だったとは食べ終えて初めてわかった。

  話を聞き終えたあと、あるじはすっかり同情して食べ物を与え、
  「食うに困ったときはいつでもおいで」と優しい言葉までかけました。
  盗人が最後に言った、こんなひと言がすこぶる気に入ったのです。

  「空腹など、灰を食べてすら簡単に満たされる程度の苦しみと知りました。
    世を生きる辛さや苦しさも、案外そんなものかも知れないと思うと
    なにやら気持ちがパッと晴れて、盗んだ物を全部お返しした次第です……」

                                    脚色  江幡店長  出典『今昔物語集』

 

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