京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】今昔物語集 宇治拾遺物語 古今著聞集 古本説話集 〜平安の物語〜

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 【平安の物語】夕立より激しい雨!実の息子の孝心に触れた父の涙

  宮中で涼みの会が催されたある夏の夕暮れ。
  にわかに夕立に見舞われて、傘を持たない多くの殿上人たちは
  帰るに帰れず険しい顔つきで空模様を眺めていました。

  一人だけ。どしゃぶりの雨の中へ傘も持たず飛び出して行った者があります。
  下役人の藤原得任(ありとう)という取るに足りない初老の男。
  沓を手に持ち、袴のすそをたくしあげて裸足で駆けてゆく。

  「やれ、このような大雨の中を、濡れて帰る者があるわ!」
  殿上人たちはどっと笑い出しました。

  濡れて帰るのには理由がありました。
  得任は今日の涼みの会に、幼いうちに他家へ養子に出した、
  実の息子・忠兼(ただかね)が参加していることを知っていたのです。

  忠兼は裕福な養父にひきとられ、貧乏でうだつの上がらない実父の得任より
  今はずっと重要な役職についている青年でした。
  年寄りを大切にし、気だても好いと、評判の好青年――。

  得任は自分が実父であることを忠兼に隠していたので、
  忠兼と同じ場所にいることが耐えられず、
  恥ずかしい気持ちをこらえて豪雨の中へ飛び出したのでした。


  見る見る濡れてゆく得任の後ろ姿を哀れに思ったのか、
  すぐに傘をもって後を追いかけていった者があります。
  その者は得任に追いつくと、白髪混じりの得任の頭の上に傘をかざしました。

  この時、殿上人たちは急に神妙な面もちになって、しんと押し黙りました。
  中には感極まって泣き出す者までいます。後を追ったのはまさに実子の忠兼。
  多くの殿上人たちは、二人が実の父子であると密かに知っていたのです。

  得任は誰かが傘をかざしてくれたのに驚き、振り返ってさらに驚きました。
  忠兼の顔が――凛々しいわが子の顔が、優しく頬笑みかけているのです。
  得任は体じゅうの力が抜けたようにわなわなと震え出しました。

  ■得任「あぁ…、あぁ…、もったいない、もったいない…」
  □忠兼「もったいないことなどあろうか。このままでは濡れてしまうぞ。
          じいさん、住まいはどこじゃ?家まで送って差し上げよう」
  ■得任「老いぼれめに情けは無用でございます…、もったいない……」

  得任は雨に濡れた頬を拭いもせず、前が見えなくなるほど
  目にいっぱい涙を溜めて、何度も何度もひたすら頭を下げるばかりでした。
  立派に育ったわが子の顔を、20年ぶりに間近で見る機会を得たというのに…。


                                    脚色  江幡店長  出典『今昔物語集』

 

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