京都せんべいおかき専門店【長岡京小倉山荘】今昔物語集 宇治拾遺物語 古今著聞集 古本説話集 〜平安の物語〜

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 【平安の物語】平安の美女と野獣!!妻に愛想をつかされた男の歌

  浮気な男に翻弄される平安女性のお話はよく耳にしますが、
  醜い容貌のため妻に愛されなくなった情けない男の話は初めてでしょう。

  むかし藤原敦兼(あつかね)という貴族がいました。
  当時、篳篥(ひちりき)にかけては並ぶ者もないほどの名奏者でしたが、
  はたで見ている者が不快になるほど醜い容貌の持ち主でした。

  ところがどういう因果か、彼の妻はきわだって美しい人でした。
  その妻が秋の節会を見に行ったときのこと。
  溢れんばかりの観衆を見渡してみると、いるわいるわあちらにもこちらにも。

    うら若く美しい貴公子
    今が最も充実した男ぶりの壮年の美男子
    大人の色香むんむんのロマンスグレー

  そんな華やかな男たちを見るにつけても、情けないのは夫の醜い容貌──。
  節会から帰って以来、妻は夫を公然と無視しはじめ、露骨に眼差しを避け、
  同じ部屋にいることすら嫌がるようになりました。

  そんなある秋の夜。

  敦兼が出仕して帰ってくると、屋敷の灯が全部消されて真っ暗闇でした。
  着ているものを脱いでも、たたんでくれるはずの侍女すら出てきません。
  妻が家中の者としめしあわせて、ついに夫への嫌がらせを開始したのでした。

  敦兼は肩を落とし、庭のすみでぼんやりたたずんでいるばかりでした。
  澄んだ月の光。清かな風の音。見頃を過ぎたませ垣の白菊。
  夜更けの静寂の中でことごとに秋が身に染みて思われ、敦兼は心の向くまま、

  ――ひとしきり篳篥をしみじみと吹いた。そして歌(今様)を歌った――

  【今様】
     ませのうちなるしら菊も  うつろふみるこそあはれなれ
     我らがかよひて見し人も  かくしつつこそ枯れにしか

  【意】
     ませ垣の白菊も枯れて衰えてしまったのを見るのは侘びしいもの
     まして醜い私が何度も通い、ようやく手にした美しい貴女の心が
     私から離れていってしまうのを見ているのは耐えられない辛さよ

  見事な篳篥の演奏の合間に、繰り返し繰り返し歌う夫の透き通った声。
  それは妻の耳に響き、心に深く深くひびく深秋の音色でした。

  ──かつて夫を愛していた時の自分は、一体夫の何を愛していたのだろう?
  その忘れかけていた思いを取り戻すよりはやく、
  妻は夫の上着をかかえ、夜更けの庭へ裸足で駆けだしていました。


                                    脚色  江幡店長  出典『古今著聞集』

 

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